大切なこと、やっとわかったんだ。
突然太陽が辺りを照らしてくれて、それでな。
やっと、俺も太陽になれるよ。





      [ 大 切 な こ と 5 ]





が元気になったことを知った。
嬉しかった、心底からそう思った。
それだけで、俺の心はすかっと晴れた。
が元気ならそれでいい。
一緒にいれば何十倍、何百倍も嬉しい。
けれど、が幸せでいてくれたら、俺はそれで十分。
それくらい、好きなんだ、きっと。

家に帰る途中、のお気に入りの公園に立ち寄った。
そこは本当に小さなどこにでもあるような公園だけれど、花壇と緑の鮮やかさはそこらの植物園に負けないくらいのものだ。
滑り台とブランコ、砂場があり、ベンチの上に屋根があり、水道もついていて。
よくあるシチュエーション。
太陽が傾きかけた静かな公園。
小さなブランコに制服姿の女が乗っていて、男がブランコの前にある柵にもたれている。
2人は恋人同士にこれからなる、あるいはすでになっているという・・・・・・・・・・。
それが、俺の目の前に広がる。
けれど、そこにいる女と男が俺の知り合いだから、遠慮せずに近づいていった。
俺の足音に気づき、女、ヒナタが手を振る。
それを見て、男、忍足が振り返り、俺と目を合わせる。





「景吾!」

「跡部やんか」

「よう」





2人ともニタニタ気味の悪い顔をしていた。
だいたい言いたいことはわかる。
それに、俺にも2人が何をしているのかわかった。
の家に見舞いに行って、ろくでもないことをに吹き込んだのだろう。
その噂の張本人がやってきたものだから、こんな笑いももれるのだ。





「気味悪ぃ顔してんじゃねーよ」

「へぇ、跡部は元彼女にも気味悪ぃ顔なんて言うんやね」

「景吾は薄情者だから、今カノにしか優しくないんだよ」

「なるほどー、ちゃんは愛されとるね。うらやましいわ」

「なによー、ヒナタ、これからかなり侑士のこと愛するつもりだからー」

「ヒナタ・・・キモいからやめといて。関西人にその話し方は禁物やで」

「・・・ゴメン」

「いつからそういう関係なんだよ、お前ら」

「「昨日くらいから」」

「・・・・・・」





正直言って安心した。
ヒナタと忍足がくっついていることに。
これで、ヒナタも落ち着くだろう。
ここに編入してからのヒナタは、以前に比べて大げさな振る舞いを見せることが多かった。
無理していたのだろう。
元カレがいて、そいつには彼女がいて、自分は寂しい身で、周りに寄ってくる男はたくさんいるけれど気に入らなくて。
元々恋におぼれるタイプなんだ、ヒナタは。
寂しがりやなヒナタを、俺は最後まで面倒見切れなかったんだな。
そう考えると、俺はなんてわがままな男なんだろうと思う。
いつか、が愛想をつかして去っていくということも、考えられる。
嬉しそうな顔でヒナタは話しかけてきた。





「ねぇ、に会えた?」

「いや。どっか行ってるらしい」

「「え?」」

「知らねぇよ、どこに行ったかなんて」

「そうなの?会いたかったんじゃないの?」

「会いたいから家に行ったわけじゃねぇよ」

「そんなアホな。じゃあなんで会いに行くねんって話やんか」

「うるせーな、放っておいてくれよ、俺のことは」

「ベストフレンドのことなんて放っておけないよねー、侑士」

「当たり前やん。俺とお前の仲やんか、景吾ちゃん!」

「お前ら・・・・・・どっか行け」

「じゃあ、行こか?ヒナタ」

「うん、行くー!」





なんとも間抜けなやり取りをして、俺は奴等と別れた。
手を取り合って公園から去っていく2人の後ろ姿。
ヒナタはくるっと俺の方を向いて、言葉を発す。





は景吾が世界で一番好きだと思ってるよ。景吾ものこと世界で一番好きなんでしょ?
 愛する人の為にになることをしたいって思うのは当然のことなんだよ。
 受けてるものが大きすぎると感じているだけであって、互いに無意識のうちにたくさん与えているんだよ。
 見えないから、わからないんだよね。形も名前も無いから、困るんだよね」





わかった、やっとわかった。
の存在は俺にとって大きい。
いつも優しくて、気が利いて、俺のやりやすいように動いてくれる。俺を支えてくれているんだ。
それは、俺という人柄や性格に対しての行為ではないと思う。
俺という人間、跡部景吾という人間に対しての行為なんだ。
俺は、だから愛してやまないんだ。
がかわいいから、優しいから、気が利くから、そういうわけで動いているわけではない。
という人間のことが心の底から好きだから。
好きでもない人間に対して、愛を注げるか?答えは、否、注げるわけが無い。

もっと近い距離がほしい。
に愛を注げる距離が。

もっと時間がほしい。
に愛を注げる時間が。

もっと話したい。

もっと笑いあいたい。

もっと触れていたい。

俺の中のはまだ笑ってくれない。
以前は、の笑った顔がすぐ思い浮かんだのに、今ではあの不気味な笑みしか思い浮かばない。
それだけ印象が強かったんだ。
早く、に会いたい。
想いだけが先走って行く。

に笑って欲しい。
笑ってくれないのなら、俺が笑顔を引き出してやるよ。

に輝いていて欲しい
が月なのだとしたら、俺はたった1つの太陽になって毎夜照らしてやるよ。

が太陽なのだとしたら、俺が輝いていられるのはの存在のおかげなんだ。

高鳴る気持ちを抑えて、俺は一夜を過ごす。
朝になればに会える気がした。
太陽が昇れば、綺麗な青空が見えるはずだ。
それは、俺の心を映し出しているんだ。

明日になれば、手を伸ばしてに触れられると思った。








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うわー、なんか最後のほうキモい。
現実の世で言われたら虫唾が走るやもしれぬ(苦笑
例えば、カレのどこが好き?と訊かれたらなかなか答えられないと思う。
性格が好き、身体が好き、行為が好き、いろいろあるよね。
でも、それら全てをひっくるめて、その人のことが好きなんだよね。
ということを、これ書いてて強く思った。
私はなかなか「この人!」とピンとくる人に出会ったことが無いからわかんないけど。
だいたい、そういう子が夢小説書いてるのはおかしいんだけど、そういう願望が形になってるのかも。


d r e a m ... ?
t o p p a g e ... ?

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