や っ と 会 え た

笑 っ た キ ミ に





      [ 大 切 な こ と 6 ]





太陽が昇る。
目覚めた俺はいつもどおり朝食をとり、家を出た。
太陽の光は温かい。
そう思いながら、通りを駆け抜ける車に身を委ねる。
無機質な空間に閉じ込められた俺だけれど、そこから見える景色を楽しむ余裕がある。
流れる景色の合間にの姿が映る。
それは幻想に過ぎないけれど、俺には十分だった。

明かりのついた部室。
静かなテニスコート。
それは、少し日常とは異なる。
部室に一番に入るのはいつも俺だ。けれど先客がいるらしい。
それに、たいてい散らかったままのテニスコートが広がっていて、とても静かとは言えないものだ。
俺はゆっくりと扉を開いた。
大き目のテーブルの上にテーブルクロスがひかれ、小皿にクッキーが盛り付けられ、紅茶の入ったカップがおかれている。
テーブルの隅のイスに白いブラウスに黒いスカートの女が座っていた。
紛れも無い・・・だ。
は俺の姿を確認すると、イスから立ち上がって笑ってみせた。
部室の中だけ春になった気がした。





・・・・・・」

「景吾、久しぶりだね」

「あぁ。・・・その格好は・・・」

「感動的な再会?」

「あぁ、十分だ。がいれば、もうそれだけで十分」





俺はの腕をぐいっと引っ張って抱きしめた。
ずっと触れたかった。
ほしかった感触が、得られた。
ずっと抱きしめていたい、そう思った。
抱きしめる腕の力を緩めると、が苦しそうにしていた。
どうやら、締め付けすぎたらしい。
笑ったの顔は、俺には眩しすぎた。
その後、無我夢中でとキスしていた。
部室の扉を開く音が聞こえるまで・・・。





「おおっ、感動の再会やん!ええモン見さしてもろたで、跡部!」

「えー、ちゃん、どうして跡部なんかとキスしちゃうの?くやC−!」

「ジロー・・・ちゃんは跡部の彼女なんだから仕方ねぇだろ」

「えー、いいじゃん、俺もしたいしたい、したEー!」

「おめぇら、うるさい」





俺は頬を赤く染めるの肩を抱いて、忍足、ジロー、向日を一喝する。
すると、いつもならばもっと絡んでくる忍足が、ジローと向日のブレザーをつかんで、部室の外へ出て行った。





「公立の学校やと部室なくてテニスコートの側の茂みで着替えるとこあるんやて。1回やってみよか?」

「「賛成ー!」」





俺達に気を遣ってかしらないけれど、3人の声は次第に小さくなっていった。
その後、テニスコートからボールを打ち合う音が聞こえ出した。
は「穴埋めがしたいから」と言ってイスに腰掛けた。
俺も、の隣のイスに座る。
落ち着いた朝を迎えた。
紅茶とクッキーが俺の心を和ませた。
なにより、の側にいられて幸せだ。
こんなに大事にしたくて、側にいないと不安になる存在なんて今までにあったか?否、無かった。
俺の考え方を変えてくれたのは、なんだ。
俺がここまでやってこれたのは、のおかげなんだ。
が穴埋めすることなんてない。俺は、がいるだけで生きていけるんだ。
だから、の中に穴が開いているなら、それを俺が埋めたい。





「これ、美味いな」

「よかった〜。おいしいって言われると嬉しくなるよ」

「もう、身体はいいんだな」

「とっくの昔によくなってたよ。行きたくなかっただけ。
 あ、もう今は行きたくないなんて全然思ってないよ。行きたくて行きたくて仕方ないんだもん」

「どうして?」

「みんなに、景吾に会えるのが・・・楽しみで仕方なかったの。ゴメンね、景吾にすごく冷たい態度とって。
 あの時、私、精一杯だったの。あの態度でさえ精一杯頑張って出せたの。ゴメンね、本当にゴメンね。
 景吾のこと、たくさん傷つけたから、穴埋めしたいの。埋まらないのはわかってるけど」





はそう言うと、俺の手に自分の手を絡めてきた。
ティーカップに添えていたから、温まった手。
ぬくもりが、俺にはすごく優しくて、涙が出そうになった。
こうやってに触れていられることを、誰かが許してくれたんだ。
許可なんているはずがないのに、そう思ってしまう。

ゆっくり手を握る力を強くする。
繋がった手、離したくない。
この想い、伝えたい。





「俺こそ、穴埋めしたいんだ。にそんな思いさせてしまって、悪かったな。
 の笑った顔見たいのに、俺が辛い思いさせててな。・・・・・・ゴメン」

「そんなことないよ。景吾がいろんなことしてくれて、私、毎日幸せなんだから。
 お返しがしたいんだけど、全然思いつかないから困ってて。
 こんなに愛されてるのに、景吾には他の子のほうが似合うって考えてたら、愛されてるのも見えなくなってしまってたの。
 やっぱり、景吾の側にいたい。景吾じゃなきゃ、ヤダ」

「当たり前だろ、の隣には俺しか釣り合わねぇって。ずっと・・・側にいろよ」

「うん!」





もう一度キスした。
触れた唇は温かかった。

愛されてることがよくわかった。
2人の愛が深まった。
所詮、愛なんて一方通行の想いが2つ存在するだけにすぎないかもしれないけれど、
その2つの距離が近いことに変わりは無い。

距離を置いてわかったことは、に愛されているということと、俺がを愛しているということ。
大切なことは、形の無い見えない想いに





触れていること。







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最後のほうどう書いたらいいかわかんなくなってテキトーでゴメンナサイ。
大切な人には幸せになって欲しい、愛を注ぎたい。
貢ぐのとは違うから愛なんだろうなーって思いました。
側にいられるだけで幸せって思うことは、安いことなんだろうか?


d r e a m ... ?
t o p p a g e ... ?

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