[ fake it !!!!! ]










逃げちゃいけない。
立ち向かわなくちゃいけない。
けれど、そんな勇気もない。
だって、いつも私に勇気をくれたあなたと向き合うのだから、誰も私に勇気を与えてくれない。
自分で奮い立たせないと。
想いは全て空回り。

距離を置いて解決できる問題じゃない。
心を閉ざしたら意味がない。
仲良くなったらダメだなんて、誰も言ってないよ。
だから、もっと近づいてもいいんだ。
多分・・・。

ちゃんと笑おう。
うまく笑えなくても、その中途半端な笑顔が伝わってしまうんだ。
表情が全てを物語っている。
最初の気持ちを思い出した。
キラキラ輝いている柊くんが好き。
見ているだけで勇気をもらえる、元気になれる。
そんな柊くんにお返しができるのなら、なんでもやろう。
きっと何かほしいなんて言わないから、私から笑顔を送るんだ。

会えなくても、淋しいって思ったらダメ。
絶対に柊くんはどこかにいるのだから。

朝からずっと雨が降っている。
授業中に眺めた空は、どんより曇っていた。
風も強い。台風みたいだ。
帰るのが憂鬱。
廊下の傘立てを見ると、私の傘がなくなっていた。
ピンクのチェック柄の傘がない。
クラスメイトに同じ傘を使っている子はいないから一目でわかるのに、ない。
誰かに盗られたんだ。
外は雨。とても濡れて帰ることができるような状況じゃない。
廊下で動けなくなった私をすぐに見つけてくれたのは柊くん。





?どうかした?」

「あ、柊くん。傘盗られちゃってないんだよねー」

「じゃあこれ使えよ」





柊くんは自分が持っている傘を私に差し出す。
「けど、柊くんの傘がなくなっちゃう」と言えば、「部活あるからまだ帰んねーし、なんとかなるだろ」と軽く言い放つ。
受け取れずにいると、柊くんが私の手に傘を握らせてさくさく歩いていった。
ありがたく受け取って、私は家路に着いた。
柊くんが帰るまでに止むかな。
止めばいいのにな。

なんとかなるのかな。
なんとかならなかったらどうするのだろう。
気になって仕方がない。
結局家には帰らなかった。
図書室に直行。宿題を片付けたら読書タイム。
本を読みふけっていたら、太陽が沈む時間になっていた。
まだ、雨は止まない。
バスケ部の部活は何時に終わるのだろう。
わからないから体育館の近くへ向かった。
照明は消えていた。
部室へ走る。部室の窓から灯りがもれていた。
安心してほっと息をつくと、部室の扉が開いて誰かが外へ出てきた。
私の待ち人だ。
ぽつんと立っている私に気づいて駆けてきた。
雨は降ったまま。
柊くんから借りた傘に、私と柊くんのふたりが入る。





「結局帰らなかったのか?」

「うん。だって雨が止まなかったら困るし」

「立花とかいるし、置き傘もあるからなんとかなったんだけどな。・・・まぁ、待っててくれてありがと」





感謝の言葉を述べられて、なんだか照れた。
こくりと小さく頷くと、柊くんは私の手から傘を取り上げる。
ひとつの傘にふたり、窮屈なのはわかっている。
雨の道を並んで歩く。
肩や腕が触れるたびにドキドキする。
このまま時間が止まればいいのに。
この一時が永遠になればいいのに。
そんなことを願ったって、叶わぬ夢。

黙ったままの私を心配そうに覗き込む柊くん。
精一杯の笑顔を送ろうと決意したのに、うまく笑えない。
心の扉は開かない。鍵がかかったまま。
鍵は見当たらない。
外に出たければ、扉を突き破ればいいんだ。
私の力で扉が破れるとは思えない。
途方にくれる私は、結局うまく笑えない。





「無理に、笑わなくてもいいんじゃねえの?」

「え?」

が笑ってくれるのは嬉しいけど、うまく笑えないなら無理にしてほしくないし。
 悩んでることがあるなら俺でよければ話は聞くし、できることがあれば進んでやるし」





私のことはお見通しなんだ。
うまく笑えないことは気づかれていた。
ごまかせない。
自分のことは偽りたくない。
でも話せない。
「ごめんね」と言うので限界だ。
これ以上、何も伝えられない。

肩をつかまれ世界がぐるっとまわる。
雨音がしっかりと聞こえる。
何が起こったのかわからなかったけど、時間を掛けたら理解できた。
私は、柊くんに抱きしめられている。







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起承転結の「転」ですね。
いよいよ次で完結・・・です、多分。
今回は書いてて楽しい長編になりました。
参考になったのは、新聞の連載記事。
結婚にもいろんな形があるんだってよくわかった。
だから、恋愛にもいろんな形があっていいはず。

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