[ fake it !!!!!! ]
が思いつめているのは顔を見たらわかった。
繋ぐ言葉にも心がこもっていない。
話をしながら、どうしたものかと考えていたけれど。
どうしようもない頭の悪さがこんなところに現れるとは思いもしなかった。
気づいたら、を抱きしめていた。
妙に雨音が耳に響く。
を強く抱きしめるごとに、心がどんどん軽くなっていく。
ただの開き直りだ。
この後どうなろうと、今が満たされるならばそれでいいや、と。
ずっと、こうしたいと思っていたんだ。
付き合わないで、見ているだけでも十分と思い込んでいた。
それがベストだと、思い込んでいた。
けれど、もっと触れていたいという欲求が膨れ上がる。
結果として今がある。
時間がどれだけ経ったのかわからない。
腕を解いてを解放してやる。
恐る恐るの顔を見た。
意外だった。
は優しく穏やかに微笑んでいた。
「なんだか・・・ちょっと楽になった。ありがとう」
「そう・・・ならいいや、それで」
「あ、あのねっ」
改まって何かを伝えようとする。
真っ直ぐ、俺の目を捕らえる。
は小さく頷いて、素直な気持ちを打ち明けてくれた。
「私は柊くんが好き。だから、もっと一緒にいたいって思うようになってた。
でも、それだと始めに話したことと矛盾しちゃうから、柊くんに迷惑だと思って、ずっと悩んでた。
うまく笑えなかったけど、さっき柊くんにギュってされたからちょっとうまく笑えたかな?」
「あぁ、十分うまく笑えてたよ。俺も、同じようなこと考えていたから・・・」
「本当?」
頷いたら、はほっと胸をなでおろしていた。
初めの頃の俺達を思い出した。
に告白して、後のフォローもせずにブラブラしていたらから俺を捕まえて話をしてくれた。
の考えていることと、俺の考えていることがそっくりで、同意したんだ。
全く同じパターンだ。
俺は今までどおりやっていく、も今までどおりやっていく。
だから、俺達のペースは変わらない。
他の人よりペースが遅くたっていい。
ふたりの関係が急発展したとか、現状維持のままだとか、そんなのは関係ない。
うまくやれればいいんだ。
雨はまだ止まない。
ふたりで同じ傘の中に入って、再び歩き始めた。
どこまで進めるだろうか。
ゴールはあるのだろうか。
いつまで同じ傘の中にいられるだろうか。
いろんなことが、頭の中に浮かんでは消えていく。
隣を歩くの様子を伺った。
笑顔だった。
いつまで笑顔でいてくれるだろうか。
いつまで俺のために笑ってくれるだろうか。
「考え事?」
俺の顔をのぞきこんで言う。
には、俺の行動はすぐにわかるらしい。
頷くと、は笑顔をふりまく。
俺の考え事は、今、必要のないことなんだ。
今、隣で笑顔をみせてくれるならそれでいい。
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ちょっと中途半端な終わり方・・・かも。
書いていて楽しかったです。
「両想いなのに付き合わない」という特殊なパターンを書いてみたかったのですが、
結論として「マイペースで行こう」ってことになってしまった(汗)
テーマとしてあったことは、「気持ちをごまかせない」ってことです。
そんなタイトル。
I'll dream page... ?
dream select page ... ?