[ 今 は 休 み 時 間 ]





なんで別れちゃったんだろう。
距離をとりたかっただけなのに、「じゃあ別れよう」と言われて頷いてしまった。
徹のこと、大好きなのに。
大好きだけど、距離を置きたくなったのも事実。
徹は、私との距離が遠いのに耐えられないのかな。
だったら別れちゃおうって思ったのかな。
大好きなのに、ずっと近いところにいたのに、そんなこともわからないんだ。

一緒に宿題をしたり、一緒に買い物に出かけたり、一緒にいて笑いあえた。
徹の部活の試合は、できるだけ見に行った。
あんなに毎日が楽しかったのに、もうあの日々は戻らないんだ。

思い余って涙がこぼれてしまった。
俯いて、指先で涙をすくう。
慰めてくれる人なんて、どこにもいないよ。
いつも私を慰めてくれた人が傍にいなくて泣いているのだから。

自分で蒔いた種なんだから。
ちゃんと前を向いて歩こうよ。
前を向いて歩きたいよ。
でも、私は俯いて歩くことしかできないよ。

対等だと思っていたんだ。
でも、対等じゃない時間が増えてきた気がした。
だから、距離を置いて、お互いの存在をもう一度見直したかった。
私の勘違いだったらよかったのに。
私は、徹のお姉さんじゃないんだよ。お母さんじゃないんだよ。
ただの幼馴染だよ。ただの恋人だったんだよ。
同じ血は流れていないんだよ。赤の他人なんだよ。
私は、徹の世話をするために生きているわけじゃないんだよ。
弟がいるから、面倒見のいい子って思われることも多いけれど、ずっとそんなことしていたら疲れちゃうじゃない。





「お兄ちゃんでもいたらよかったんだよね、私に」

は兄貴がほしいのか?」

「た、た、た・・・せんぱい」

「ちゃんと名前呼べよ」





私の独り言に相槌を打ってくれるのは高柳先輩。
前の試合で腕を痛めたから、これから病院に行くんだって。
今日は火曜日だから、私の合唱部はお休み。
徹と高柳先輩のバスケット部は、練習がある日。
徹は、体育館で走り回っているんだろうな。
そう思うと、また涙がこぼれそうになる。

ポンと頭に手を置かれた。
高柳先輩の温かい手。
泣いている場合じゃない。
先輩に心配かけている場合じゃない。
しっかりしなくちゃ。
前を向いて歩きたいのだから。





「少し、ゆっくりすればいい。休憩したら、頑張れるだろ?」

「そう、ですね。今は休み時間、ですね!」





先輩は、おそらく徹から話を聞いているのだと思う。
私が距離を置きたいと切り出したこと。私たちが別れたこと。
距離を置くのは休み時間だ。
もしかしたら授業の間の休み時間みたいに十分しかないかもしれないし、昼休みのように一時間あるかもしれない。
夏休みのように一か月ってこともあり得るのかな。

しっかり羽根を伸ばそう。
そうしたら、いろんなものが見えるかもしれない。
うん、目が疲れているのかもしれないね。
だからよく見えなくなっているのかもしれない。
自分のことも、大好きな徹のことも。







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距離を置く→結局別れる
ってのは嫌なので。
別れてしまったカップルが復縁するお話を書いてます。

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