[ 私にはわからない計画 ]





ただ、憧れているだけ。
そう自分に言い聞かせてきた。
憧れと恋は違うから、違うから、違うから。
だから、跡部くんに心惹かれるのは憧れているだけ。
恋じゃない、恋じゃない、恋じゃない。

恋じゃない。

そう信じたかったけれど、どうやら違うらしい。
私は跡部くんに恋をしている。
強烈に惹かれている。
どうしようもないくらいに。
心が潰れてしまいそうだ。

おかしくて笑ってしまった。
会議室の大きなテーブルを挟んで真正面にいる跡部くんは、そんな私を見て眉をひそめた。
二人きりの会議室。
まだ、会議のメンバーは揃っていない。





、何がおかしい?」

「ううん、なんでもない。私の頭がおかしいだけ」

「そうだな」

「そこ否定するところじゃん!」

「普段はおかしくない。だから、そんなことしねえだろ?」





跡部くんのご意見はもっともだ。
普段の私なら、突然笑い出したりなんてするもんか。
頭がおかしいのだ。
跡部くんに恋焦がれて、その跡部くんと二人きりだもの。
どうして部長会議の座席がこうなってしまったのだろう。
体育会系と文化系に分けただけなのに、うまく私の席は跡部くんの真正面になってしまった。
喜ばしいことなのだけれど。

私は跡部くんの意見に同意して頷いた。
そして、おでこをテーブルにくっつける。
とても跡部くんの顔を見れたもんじゃない
しかいねえんだから、俺の相手しろよ」と跡部くんの声が聞こえる。
私じゃお相手は務まらないよ。役不足。足りなさすぎる。

深呼吸した。
心を落ち着かせよう。
バッと勢いよく顔をあげたものだから、跡部くんは驚いていた。
その表情を見て、私の心は和んだ。
それと同時に、他の部長会議の参加者が入室してきた。
といっても一人だけ、私の親友ゆりりんが。





「あれ、跡部くんとだけ?私、お邪魔?」

「邪魔だな」

「ちょーっと、跡部くん、何言ってるの???」





跡部くんの発言に面食らっていると、ゆりりんはニコニコ笑って会議室から出て行った。
彼女は、私が跡部くんに憧れていることを知っている。
だから二人きりにしてくれたのだろう。
その気遣いが、逆に私を緊張させる。
どうしよう、跡部くんの相手なんて務まらないよ。

私は俯いて、跡部くんは腕組みして座っている。
黙ったまま、お互い何も言わない。
でも、悪い空気じゃなかった。
私は、その空気に酔っていた。

廊下から大きな話し声がたくさん聞こえてきた。
おそらく会議の参加者がやってきたのだ。
きっと、ゆりりんは何事もなかったかのように会議室へ入ってくるだろう。
跡部くんが何か言った、それを理解しきれずにいたらたくさんの人が会議室へ入ってきた。
ねぇ、今、何って言った?





 真正面だと逆に顔を合わせにくいな、ま、視線が合わなければいつまでも見ていられるけどな

 隣のほうがよかったか、そのほうが話しやすいだろうな

 わざわざの真正面になるように計らったのに、計算失敗か





私の真正面になるように席を計らうって何?
私の面白い顔を眺めるのが楽しいから?
意味がわからないよ。
わかるように説明してくれないの?

部長会議の最中、跡部くんの視線が痛くて一瞬たりとも真正面を向けなかった。
動揺しているんだ。
まさか、跡部くんは私のことが好きで、部長会議の席を私の真正面になるように計らったの?
信じられないよ。
でも、そうとしか解釈できない。
いや、うぬぼれてるからできる唯一の解釈なのかもしれない。
やっぱり、私の面白い顔を眺めているのが楽しんだ。
からかって遊ぶのに丁度よいのだ。





ねえ、跡部くん。「そうだ」と言ってくれないの?







 NEXT->

**************************************************

1話完結のつもりが、なんだか長くなりそうだったので分けました。
真正面より、隣の方が距離も短いし話やすいです。
顔見て話すのがニガテなのは、私です、はい。

tennis dream ... ?
dream select page ... ? inserted by FC2 system