[ ア ル コ ー ル ラ ン プ ]





痛いのは俺の心だ。

いたい、いたい、いたい。





「痛いって、痛いから、!!!」

「うるさいなー、けが人は黙ってな」

「けが人をもっと労われー」

「誰が労わるか、ボケ」





口は悪いけれど、心の底では心配しているんだと思う。
の表情は見ていられなかった。
心がぎゅっと締め付けられるような顔。
目を伏せて、消毒液を俺の顔にぬりつけるの肩が少し震えてた。
発した声も、次第にかすれていく。





「なんで・・・こんな、ことに・・・なってまで、ケンカ、しちゃう、の?」

「なんでって・・・仕方がなかったんだよ。誰かを守るっていうのは自分を犠牲にするってこと」

「そんなに大切な人なの?」





どうして肝心なときに鈍感なのだろう、は。
以外の誰かを守ってこんなことになるなんてご免だ。
でも、「を守ってこんなことになった」なんて言えない。
言えば、は傷つくだろう。
知らないことが優しさになることもあるんだ。
そう自分に言い聞かせて、黙秘を貫くことを決めた。
チンピラがに目をつけて襲おうとしていたのを阻止しただけ。
バスケ部の一員である以上、こちらから手は出せない。
怪我を最小限にすることだけを考えた。
けれど、顔は傷だらけ、腕も、ところどころ切れてるし、制服のズボンのひざは少し破れた。
誰かを守るということは、自分が傷つく覚悟を決めること。

そして今に至る。
運悪く、傷だらけの俺の第一発見者はだった。
保健室に連れていかれ、消毒液を傷にひとつひとつ丁寧に・・・ならばいいのに、は雑だからぬりつけるように消毒液を顔につける。
だから痛い。
けれど、心も痛い。痛い。
を守ったけれど、に心配かけてしまった。





「泣くなよ、そんなことで」

「泣くよ!徹が傷ついてあたしが悲しまないわけないじゃん」

「なんか、ちょっと嬉しいな。が俺のことそんなに想ってくれてるってわかったから」

「口は悪いけど、あたしはちゃーんと徹のこといつも想ってます!」





ふくれっ面の。それを見るのもおもしろい。
心配かけてごめんな。
今度は、の笑顔が見られるように頑張るからさ。









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「心配かけてごめん」より「笑顔をもらえるように頑張る」
のほうがプラス思考でいい感じかな。

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