[ 公 園 コ ミ ュ ニ ケ イ シ ョ ン ]





明日は休みだから徹に会えるかなーとか、恋するオトメ的思考回路を巡らせる。
家は近所。でも違う高校に通うからなかなか会えない。
幼馴染なんてそんなもんだ。
風が吹けば、制服のスカートが舞う。
ひとり、ぼーっと過ぎ行く景色を眺めながら歩いていた。
駅からの帰り道。
自分の家はまだ見えない。
薄暗い帰り道は、少しだけ寂しい色。

かばんを少し大きく前後に振ってみた。
急にブランコに乗りたくなる。
早足で近所の公園に向かう。
夕暮れの公園で遊ぶ子どもたちなんていない。
ブランコを揺らすと、キーキー乾いた音が響いた。
子どもの頃に戻ったような気がした。





「ニヤニヤ笑いながらブランコ乗んなよ。気味わりー」

「へっ?」

「お姉さん、変人にしか見えないよ」





自転車に乗った徹が、公園の外で私を見ていた。
笑いながら私のそばまでやってくる。
「何やってんの?」と尋ねる徹は普段着だから、学校帰りじゃない。
自転車を止め、徹は隣の空いたブランコに座る。
ブランコを軽く動かす仕草が、かわいらしい。
そんなこと、口が裂けてもいえない。
男の子に「かわいい」は禁句だから。
じーっと見ていると、徹が突然私を見る。
慌てて首を振ると、徹は首をかしげていた。

と話すのも久しぶりだよなー」徹が呟く。
家が近所なのに全く会わない。
会いに行かないから会えないのは当然のことだけれど、偶然があったっていいじゃない。
毎日頑張って学校に行ってるのだから、そんな私にご褒美くれたっていいじゃない。
でも、誰もくれないんだ、ご褒美なんて。
自分で努力しなくちゃ、意味がないんだ。

「なつかしいな」遠くを見ながら言う徹。
横顔がまぶしい。
夕日が沈みそう。
私の心も、海の底に沈みそう。
頑張らない私は、海の底に沈めたほうがいいんだ。
頑張る私は、きっと沈んだって浮いてこれるから。





「なつかしい空気だね、ブランコに乗って、徹と話すのって」

「最近、会わねーしな。学校違うし。元気にしてんの?」

「あたりまえじゃーん。元気だからブランコに乗ってるわけよ」

「そうか?がブランコに乗るのは、元気がないときじゃん?」





よく覚えてるの、この人は。
小さいときから、私はブランコに乗ると大真面目な顔をしていた。
そんな私を不思議そうに見ていたんだ、徹は。
考え事をしたいときはブランコに乗る。
ひたすらこいで考える。
答えが出ればそれでおしまい。
出なければ、次の日もまた次の日もブランコに乗る。

ねぇ、徹のこと大好きだよ。
好きすぎて、どうしたらいいかわかんないよ。
抱きついたら振り払われるのがわかってる。
だから、どうしたらいいかわかんないの。
爆発しそうなこの想いを、どうすればいい。
伝えてどうにでもなるものじゃないよ。
お願い、爆発物処理班を呼んで!!!

私はぐったりしていた。
どうやらブランコから落ちたらしい。
「頭悪い」と呟きながら、私は世界がぐるぐる回っているのを見ていた。
徹の声が耳に響く。
何度も何度も「大丈夫かっ」と尋ねていた。
誰に?私に。
そう、こんな頭の悪い私にずっと尋ねていた。
目を閉じればぬくもりを感じる。
気がつけば、徹に抱きしめられていた。
ブランコの前、地面に座り込んだ私と徹。
動けずにいる。





「送るから、帰ろう。今日のはおかしい」

「ううん、大丈夫。ちょっとめまいがしただけだから大丈夫」

「ちょっとじゃないだろ。めまいがする時点でおかしい。心配させんなっての」





ため息をつく徹だけれど、なんだか嬉しそうだった。
その理由はわからないけれど、徹と手を繋いで家に帰る途中で気づいた。
久しぶりに私とコミュニケーションをとれたから嬉しかったんだ。
私のことが好きとか、そういうのはわからないけれど、
この人は昔から久しぶりにコミュニケーションをとると楽しそうにする。
私とか、ハルとか、他の仲間たちと。
淋しがり屋の徹だから、私が傍にいてあげないと。
ただの幼馴染でいいから、ずっと傍にいさせて。









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ちゅーとはんぱですね。
応用をきかせられるような人間にならんとね・・・はぁ。
頭が悪いのは私です。

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