# ど う し て だ ろ う #





どうしてだろう。
どうして私と徹は付き合っているのだろう。
かわいい子は周りにたくさんいる。もう星の数だけいると言っても過言ではない。
それでも、徹は私を選んだ。どうしてだろう。
今まで、その疑問を徹に話したことはない。

久しぶりに、徹の練習試合を見に行った。
いつもなら友人と一緒なのだけれど、彼女の恋人がケガをしてバスケ部のレギュラーからはずされたから来ないのだ。
結局、チームの応援ではなくて、恋人単体の応援なのだ。私も、同じようなものだけれど。
応援を終えて、会場の外へ出る。
徹と一緒に帰る約束をしているから、ひとり、校門の側で立っていた。
校門から体育館はよく見える。
出入り口から徹が出てきた。
私は笑顔で手を振ろうとしたが、女の子達が徹を囲んでいるのでやめた。振ったところで見えやしない。
暗い気分で私は校門を通り駅へ向かう道を進み始めた。
後で「残念だね」とか「また行こうね」とか聞こえた。
女の子の大合唱、「原田くん今度は遊びに行こうね」と耳に悪いくらい大きくて甲高い声。
女のくせに、女の甲高い声が嫌いだと言ったらおかしいだろうか。私の声はそんなに高くない。





「おい、どこ行くんだよ、

声を掛けられ、肩をつかまれるまで私は徹を無視していた。
徹がモテるのはわかっている。けれど、自分の目の前で他の女の子に囲まれているのを見て気分がいいと言う者はいないだろう。





「別に、帰るだけ」

「何怒ってんだよ。俺、なんかしたか?」

「徹は何にもしてないけどね。だって、私の目の前で女の子に囲まれてるんだもん」

「あぁ、嫉妬ね」

「嫉妬じゃないもんっ」





私の隣で徹は笑っている。あぁ、思い出した。その笑顔、とても好きなんだ。
笑顔を見て、少しだけ心が安らいだ。私の隣で笑ってくれるんだ、この人は。
でも、不思議だな。
どうしてこんなにいい人が私の隣にいてくれるのだろう。





「どうしてって言われても、俺もが好きだし、は俺のこと好きなんだろ?」

「そういうこと、さらっと言えるね」

「まぁな。俺だって、どうしてが隣にいてくれるんだろうって思ったりもするな」

「そうなの?」

「どんな時でも優しく接してるし、誰にでも笑顔だし、細かい気配りに助けられてるんだよな」





「好き」と囁かれるより、ぶっきらぼうでも好きな所を言ってくれると嬉しいものだ。
私はそのように思われているとは知らず、驚いて物も言えなくなった。
黙ったままの私を見て、徹は目を丸くしている。





「フツウさぁ、なんか言うだろ、そこで。しゃべれよ、〜〜〜」

「いひゃい、いひゃいー」





話さない私の両頬をぐいっと引っ張り遊ぶ徹。
私は徹の両手首をつかんで腕をを離させる。
徹はまた笑う。よく笑うんだ、この子は。私もそれにつられて笑うのだ。





「とにかく帰ろうぜー。俺、腹へった」

「私もお腹すいたー。どっか食べに行こうよ」

「そうだな。まずは、駅前まで行こうぜ」

「うん」





はっと気づけば私は徹の手をとり楽しく歩いている。
それを見て、徹は大笑いする。





は口で言うこととやってることが全然違うよな」

「悪かったわね」

「ま、それだけ俺のこと好きってこと?」

「ば、ばかっ、そんなことないよ」

「えーっ、俺のこと嫌いなんだ?へぇ、そうかいそうかい」

「だから、そういうんじゃなくってぇ・・・・・・」





徹は私をからかいまくり、楽しんでいる。
途中で高柳先輩が「お前らなんだかんだ言ってラブラブだよな」と言いながら通り過ぎていった。
口ではいろんなことを言うけれど、好きだからずっと仲良し。
周りにどんな子がいようと、結局は仲良しこよし。





どうしてだろう、と疑問に思うこともある。
けれど、好きだから付き合っているんだよね。
好きじゃなかったら付き合うなんてとんでもない。
考えるだけ無駄なんだ。










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似たような話を書いたことがあるような気がしたけど思い出せない・・・。
仲良しこよし、いいね、うらやましいー。
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