【幸せはほんのりとココアと肉まんの味】





 似合うもの バスケット部の試合のユニフォームと高柳くん。
 似合わないもの 肉まんと高柳くん。
 ホットココアを飲む私の隣で肉まんを頬張る高柳くんは、笑顔ではないけれどお腹が空いていたから嬉しそうに食べている。

「本当に似合わないね。高柳くんと肉まん」
「怒るぞ」
「怒んないでよ」

 短い付き合いではないから高柳くんが本気で怒ることがないのはわかっている。高柳くんが肘で小突いてくるので、ココアをこぼさないように気を付ける。
 寒い日は温かい飲み物と食べ物が恋しくなる。隣を歩く人がいてほしくなる。
 肉まんを掴んでいない高柳くんの空いた手に指を絡ませてみる。すぐに高柳くんの手が私の手をぎゅっと握る。高柳くんが隣にいることをひしひしと感じられて、嬉しい気持ちが顔に溢れ出てくる。

「嬉しそうだな」
「うん、嬉しい。ありがとう」

 好きな人が隣にいて手を繋いでくれて、この瞬間が本当に幸せだと感じる。寒いのに心も体もぽかぽかと温かくなったようだ。
 高柳くんの片手が私の手の中のココアの缶を指差す。黙って渡せば高柳くんは一口飲んで私に返してくれた。ココアと肉まんは合わないだろうに。

「ココアは肉まんに合わないでしょ。私と間接キスしたかったの?」

 冗談まじりに言えば、

「そうだな」

 と真面目な声で返事がきた。
 似合わないものがもう一つ。高柳くんと冗談。
 そういえば私の間接キスはまだだったなと思い、ココアの缶に口付けた。




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テーマ 冬の下校中の制服デート。
制服姿の学ちゃんと肉まん似合わないなと思いながら書きました。買い食いが似合わないなぁ。

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