本当に学は私のこと好きなのかな、と疑問に思ってしまうよ。





      [ ア イ ア イ ガ サ ]





校内で会って話しかけても素っ気ないし、二人きりのデート中も素っ気ないし。
何なのこの人?と思うけれど、彼氏だということは紛れもない事実。
キライじゃなくてスキだということは紛れもない事実。
もっとベタベタしたいわけじゃない。もっとキスしたいわけじゃない。もっと抱き合いたいわけじゃない。
けれど、これじゃ物足りないよ。
何が足りないのだろう。
真剣に考えてみるけれど、素っ気ないこと以外思いつかない。
かといって、他の友人達の恋人のように愛嬌の大盤振る舞いをされたら気味悪いと思う。
学は、学だ。
けれど、私のこと好きじゃないのに付き合っているように思えてくる。

まずは、私のこと好きなのかどうか、尋ねてみるか。

週に一度のバスケット部がお休みの平日。
学と一緒に帰る道は、残念ながら雨模様。
互いに傘をさしているから、互いの距離がいつもより遠い。
私は学の手にそっと触れた。
驚いている学が、こちらをまっすぐ見ている。





「何?」

「私のこと、好き?」

「は?」

「だーかーらー、私のこと好きかって聞いてんの!」





怪訝そうな顔をして、私から目を逸らした学。
視線は上向き、どこを見ているのかよくわからない。
そんな学の横顔を眺めていたら口が動いた。

「好きに決まってんだろ」

今度は私が驚く番だ。
けれど、冷静に、冷静に。
腹の中で何を考えているのかさっぱりわからないもの、学は。
次の一手を考えている間に、学はこの雨の中、傘を閉じて私の傘の中に無理矢理入ってくる。
私が慌てていると、学の腕が腰に回される。





「ちょ、ちょっと、学!学校帰りだってば」

「好きじゃなかったら、学校帰りにこんなことできないよな」

「や、や、わかった、わかったから、やめてよ」

「やーだ」





学が笑っている。
学が笑った顔を見るのは久しぶりだ。
これは、私しか見られない顔なのかもしれない。
女物の傘に男女二人、相々傘。

の質問の意図がわからない」と呟く学。
なんてこったい。
不安に思うから尋ねるんだよ。
恋人を不安にさせてどうするんだ。

なんだか学は私に呆れているみたい。
血の繋がった家族じゃないんだよ、私たちは。
気持ちしか、繋がりを保証できるものがないんだよ。
「好き」っていう気持ちがなくなったら、私たちの繋がりは終わりなんだよ。

学にとっては、心の繋がりは大事なものじゃないのかもしれないね。
私のことも、大事じゃないのかもしれないね。
学の都合のよいときに、都合のよいように扱えるものなのかもしれないね、私は。

傘の柄を握る力がなくなった。
傘は落下して私たちの後ろに転がる。
学は慌てて傘を拾い上げる。
少し、雨がかかった。
湿った髪が頬にへばりついた。





「本当に私のこと好きで付き合ってるの?学の都合のよいように扱えるから付き合ってるんじゃないの?」

?・・・何言い出すんだ、急に」

「学からは私に対する愛が感じられないもん。こんなことも言いたくなるよ。不安になるよ」





少しだけかかった雨が誤魔化してくれるのを期待した。
けれど、そうはいかなかった。
泣いている?私は泣いている?
そんな顔、しないでよ。
もっと泣きたくなる。

学の指が私の頬を伝う涙をすくう。
「ごめんな、不安にさせて」と謝る学に驚いた私は顔をあげた。
視線が絡み合った?
雨の中、傘をさしてキスする私たち。
傘が周りの視線をはじき返してくれる。

「俺は器用じゃないから、好きでもない奴にキスしたり、涙をすくってやったりできないな」
鼻で笑いながらそう言った学は、私の背中をポンと押して歩くように促した。
そうだね、学は器用じゃないから私のことを不安にさせてしまうんだ。
わかったら、スッキリした。
傘を持つ学の腕に、自分の腕を絡みつかせて身体を寄せた。









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学ちゃんは不器用な愛って気がします。
でも路チューしちゃうところとか、ちょっと大胆なところもあり。笑
久しぶりにいい感じの話がかけた気がします。

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