[ 過 去 現 在 未 来 ]





ときめく心は終わりを知らないよ。

ローファーを履いて、かばんを手に取り駆け出す。
オレンジ色のフィルタが世界にかかる。
しばらくすれば、夜になるだろう。
石畳の道を行けば、正門の傍に学がいる。





「お待たせ」

「帰るか」





予想以上に帰り仕度に手間取り、挙句の果て、先生に捕まり延々と続く話を聞かされた。
普通なら5分で行くはずが、15分くらいかかったと思う。
それでも責めない学は、無神経というよりは寛容だ。
心の中で何度も「ごめんね」と謝った。
学はそんな私に気づいて、心配する。
、どうした?気分でも悪いか?」と。
慌てて首を振って否定する。
この人は、私のことをよく見ている。
それだけで、ときめく。

私のどうしようもない愚痴も黙って聞いてくれる。
他人の愚痴を聞いて幸せな気分になれる人なんていないよ。
愚痴に付き合ってくれるのはどうして?
愚痴をこぼすむなしさに気づいて、オチのない話になってしまった。





「なんか、オチおかしくない?」

「え?そんなことないよ。だって愚痴だもん。学は聞いたってつまんないでしょ」

「それでがスッキリするのなら、いくらでも愚痴聞いてやるんだけどな」





あっさり言ってのける。
けれど、申し訳ないから、今日はもう愚痴はこぼさない。
もっと楽しいことを話そう。
笑顔になれることを話そう。
どうして、学はこんなにも私が喜ぶことをしてくれるのだろう。
心にときめきが満ちている。
人生、バラ色だ。

私より何十センチも背が高くて、広い背中はがっしりしていて、大きい手は私を捕らえて離さない。
学の後姿を見ていると、ときめく心は終わることを知らないんだと、強く思う。
好き、だな。
私は、この背中にずっとついていきたいよ。





「うーん、やっぱ好きだな」

「何が?」

「学のことが」

「今更?」





今更じゃなくて、今だから強く思えること。
どれだけ時間が経っても、あなたにときめくことができる。
それは、私の心の持ちようではなくて、あなたが素敵だから。
学は気づいていないかもしれないけれど、それがあなたの魅力。

いつまでも輝いていてほしい、私の太陽。
いつまでも私は月でいないわ、あなたの太陽になるから。









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今更ながらに認識できることってあると思う。
大事なことほど後から認識できません?

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