[ サ ニ ー ゼ ラ チ ン ]





「日吉先輩!差し入れでーす」

のんきな声が部屋に響く。
図書館の学習室。
俺の目の前にカルピスウォーターのペットボトルをちらつかせるは、笑顔のまま俺の隣に座った。
12時を回った今、学習室には俺と以外、誰もいない。
模試の英語の問題を解き終えた。午前中の勉強はこれで終了。
俺たちも、図書館の外へ出た。
夏の日差しが照りつける。
黒焦げになりそうだ。
日傘を差したは、「イヤミなくらい、眩しいね、太陽って」と言った。
人工の光の中にずっと身体を留めていると、頭がおかしくなりそうだ。
勉強していないときくらい、太陽をあびなくては。
受験勉強も大詰めの夏休み。
からもらったカルピスで、のどをうるおした。

白いロングスカートをひらひらさせて歩く
市営プールの側の公園は、プールではしゃぐ子ども達のにぎやかな声でいっぱいだ。
に誘われて、日陰のベンチに座った。
ニヤニヤ笑うが取り出したものは、サンドイッチ。
タマゴ、レタス、ハム、トマト、色とりどりのものが挟まっている。
のお手製だ。
勉強でエネルギーを消費した身体には丁度いい。
あっという間に食べてしまった。
ひとつ年下のは、まだ時間に余裕があるから切羽詰っていないだろう。
それに、外部を受けなければ受験勉強は必要でないから、が来年、俺と同じ状況かどうかはわからない。
自分で選んでおきながら、弱音を吐くのはみっともない。
だから、後悔しないように、少しでもたくさん勉強するんだ。





「大学でやりたいことって、私、まだわかんない。
 でも、日吉先輩の姿見てたらね、外部受けてもっと広い世界を見たほうがいいんじゃないかって思った。
 幼稚舎からずっと氷帝なんだもん。社会に出る前に、外に出た方がいいよね」

「何が正しいかなんて俺にはわからない。
 ただ、俺は、やりたいことが外にしかなかったから外を受けようと思っただけ」

「人生って難しいね」

「簡単だったらつまらないだろ」

「それもそうか!」





納得したは、がさがさとかばんの中を漁っている。
収穫物は、デザートのゼリー。
「はい、どうぞ」と、ゼリーとスプーンを渡された。
甘いものを食べると、頭に刺激がいく。
疲れた身体が、癒される。

隣にいるも、ゼリーを食べている。
目が合った。
微笑むは、ゼリーの味に満足しているようだった。





「ちょっとだけ、日吉先輩の疲れがとれたかなって思ったんですけど」

「ちょっとどころか、けっこうとれた」

「よかった、私みたいな子でも役に立てて。
 日吉先輩の勉強を手伝うことはできないけど、メンタル面で支えられたらいいなってずっと思ってたから」

「俺を?」

「うん」





気づいたことは、受験勉強のことばかり考えていて、のことを全く考えていなかったということ。
はこうして、俺のことを考えてくれているのに、俺は勉強のことだけ、自分のことだけしか考えていない。
受験生なんてそんなものだ。
けれど、そんな受験生に俺はなりたくない。
俺にはなりふり構わずやりたい放題なんて、できない。
を見捨てるなんて、できない。

ただ、落ち着くまでは、少し甘えてしまうかもしれない。
それでも、が俺のことを受け入れてくれるのなら、落ち着いた後はとの時間を十分とろう。
俺に尽くしてくれるに、恩返しを。





「ごちそうさま」





ゼリーを食べ終えた後の空は、真っ青だった。
抜けるような青さに包まれて、暑いのにも関わらず、俺たちは手を繋いで歩いた。









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すかいぶるーな色です。
ちょっと早いけど、夏の話を。
一応去年は受験生でしたけど、大学受験なんてもう4年も前の話。
あ、テニス夢は高校生設定でいつも書いてます。

tennis dream ... ?
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