[　出　口　の　な　い　迷　路　]





どんなに強く抱きしめても、幸せになれないのはどうしてだろう。
満たされないのはどうしてだろう。
のことを好きだというのは、ずっと変わらないのに。
最近、の笑った顔を見た覚えがない。
どういうことだろう。

俺の目に映るものは全部真実で、偽りなんて存在しない。
全部、俺の産物。
全部、全部。
だから、の笑顔が見られないのは、全部、俺のせい。
が笑えないのも、全部、俺のせい。
だから、俺が幸せになれないのも、満たされないのも、全部、俺のせい。

の笑顔がないと、満たされないんだ。

「笑って」なんて言えない。
笑えないのを知っているから。
「幸せにするから」なんて言えない。
何をすればいいかなんてわからないから、約束できない。
「どうすればいい」なんて言えない。
がいちばんどうしたらいいかわかってなくて苦しんでる。
追い討ちを掛けるほど、バカじゃない。





「？」

「ん？」

「・・・・・・」

「ごめんね、ほんとにごめん」





掛ける言葉も無いのに名前を呼んで意識を俺に向かせて。
に余計な心配掛けてしまった。
の身体を強く抱きしめる。
おえつがもれてきた。
俺の背中を掴む力が強くなる。

誰にも言わずに辛い重い抱えて、苦しんで、さまよって。
入り口はどんと構えているのに、出口なんてない迷路。
もう一度、入り口に戻るなんてできっこない。
入り口は閉ざされた。
誰も、入れない。





ずっと抱きしめているから、こうしているから、俺は迷路に入れないから、

お願いだから、迷路を突き破ってここまできてほしい。









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土足で踏み込めるかどうかなんてわかんないよ。
出口のない迷路ほど、苦しいものはないです。

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