[ ぷ ち は っ ぴ ー ]















モテメイクだのモテ服だの、モテることは素晴らしい、と言わんばかりの世の中。
たくさんの人から愛されることは幸せかもしれないけれど、大好きな人から愛されないなら意味がない。
あぁ、愛しのあなたは、私のことを愛してくれないのですか?





なーんて、演劇チックなことを思い浮かべてはかき消す。
何もしなくてもモテる人はモテるんだ。
跡部くんは、そういう人だ。
私のような一般市民とは何もかもが違いすぎる。
そんな私は、少しでも近づこうとする。
必ず跡部くんの席の横を通るとか、跡部くんが頼みごとをしていたらそれを率先して引き受けるとか。
くだらないと言われてもいいんだ。それくらいしか思いつかないもの。





自然体の私を好きになってくれなきゃ意味がない。
けれど自然体の私に魅力がなけりゃ意味がない。
だからといって、着飾ったところで何にも変わらない。
ため息だけがもれる。










「俺の近くでわざわざため息つくな」





「あ、跡部くん!ごめんなさい。そういうつもりじゃ・・・」





「浮かない顔して、何かあったのかよ。はいつも笑ってるから珍しい」





「私は珍獣じゃないわよ!」










かわいくない軽口をたたいてしまう。
けれど、跡部くんにはお見通しだろう。強がっているだけだってことくらい。
「言いたくないんなら、言わなくていい」優しくそう言ってくれた。
顔を下げて洋書に目をやる跡部くん。
私は、いつも笑っているのだろうか。
疑問に思いながら、席へつく。
休み時間、こっそりと跡部くんのことを目で追っていた。
まばたきをしたときに動くまつげとか、頭を動かしたときにさらさら流れる髪の毛とか、そんなことが目に留まった。





授業も終わり放課後がやってくる。
私は教室の掃除当番だから、掃除用具箱からほうきを取り出して床を掃く。
床に落ちていたジュースの紙パックを拾おうとして手を伸ばすのだけれど、バカな男が紙パックを蹴り飛ばした。
もちろん、紙パックだけ蹴られたんじゃない。私の手も一緒に蹴られて、痛い。
「あー、わりーわりー」と反省のかけらも持ち合わせていないような謝罪の言葉。
むっとしていると、蹴り飛ばされた紙パックが命中した跡部くんが「に謝れって」と叫んでいた。
珍しい、自分のことより他人へ先に謝れと言うなんて。










「大丈夫か、手。蹴られただろ?」





「あ、うん。痛いけど、そのうち治るよ、大丈夫」





「今度会ったら殴っていいぞ、あいつ」





「殴る価値もないよ、あんな奴」










ぷーっと頬を膨らませると、跡部くんは少し笑ってくれた。
私もつられて笑う。
「無理して笑うなよ。悩みなら、俺がいくらでも聞いてやるから」
と私にだけ聞こえるくらいの小さな声で跡部君がささやく。
きょとんとしている私を放って、跡部くんは教室から出ていった。





小さな幸せを手に入れたような気がした。





もちろん、悩み事の原因は跡部くんなのだけれど、自然体でいなければすぐに跡部くんにばれてしまう。
だから、自然体で、悩んでいるときは悩んでいる顔をして、誰かに聞いてもらってすっきりして。
そうやって生きていけばいいんだって気づいた。



















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こーいうバカな男いますよね、ゴミでサッカーみたいな。
そのうちくっつくであろう、ふたり。

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