[　temptation　]















「ケイゴ！」





名前を呼べるだけで幸せ。





「？」





名前を呼んでもらえてもっと幸せ。





当たり前のことを幸せに感じ。
当たり前のことをかみしめる。
なんでも前向きに考えなくちゃ。
そう、一緒にいられる時間が数えられるほど少なくても、幸せだと思わないと。
前向きに、前向きに。
何事も前向きに考えないとやってられない。





景吾が二股かけてるとは信じがたい。
広がった噂の根拠なんてない。
景吾のことを信じられないのは、恋人として間違っているの？
信頼関係は目に見えないから、強く思っていても、意外と弱いものですぐに切れてしまう。
そんなものよね。





景吾の隣に並ぶ。いつものように、景吾の手は私の手を握るのだ。
いつもと何も変わらない。
私から伸ばしている糸は、景吾に届いているのかな。
景吾は、私の糸と景吾の糸を結んでくれたかな。
見えないから、わからないよ。










「ねぇ、景吾」





「何？」





「なんにもない」





「そんなわけないだろ」










この人はいつもそうだ。
何もないのに名前を呼んだりするわけないことを、わかっている。
そして、目で追求してくる。
黙っていてもばれるだろう。
噂を拒絶しきれていないことは。
「何、信じてんだよ」と呆れたように言われて、私は恥ずかしさに顔をほてらす。





「が、手塚と一緒に歩いていて勘違いされるのと同じだ」と言いながら、景吾は私の手を強く握る。
そう、友達と話しているだけで誤解される。
そう、友達と話しているだけなのに嫉妬する。
世の中そんなものだ。
外から見ただけでは、何もわからない。





「俺が好きなのは、だけ」
耳元でささやかれた言葉は、甘い誘惑の言葉。



















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うーん、タイトルとミスマッチかな。でもこのままで。
嫉妬するのもされるのも嫌です。
男女間の友情は成立しますから!!!

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