[ White Day 2019 ]





■柊仁成くんの場合

甘いものが得意じゃない俺の為に、バレンタインデーはいろいろ考えてくれた
ホワイトデーのお返しは何にしようか。
何が好きなのか、俺はこれっぽっちも知らない。
それで彼氏を名乗れたものではないけれど、1か月足らずで相手のことを深く知ることができるわけではない。
少しずつ日が長くなった帰り道、ぼんやりと歩いていると、背後から呼び止められた。

「柊くん」
「あー、。帰り?」
「うん。先輩たちの卒業祝い何しようかって、相談してた」

卒業祝い、か。
俺はそれどころではない。
どうするんだ、ホワイトデー。

「何か、悩み事?」
「え?」
「最近、いつもぼーっとしてる」
「そうか?」
「うん。私じゃ、力になれない?」

いっそ、本人に聞いた方が、欲しいものがわかって変な気を遣わなくて済む。
みっともない気もするけれど。

「ホワイトデー、欲しいもんある?」
「んー、なんでもいいよ」
「それがいちばん困る」
「ごめんごめん」

笑いながら言ったは、あごに指を添えて考え込んでしまう。
そのまま、俺のことを忘れて、すたすたと前を歩いていく。
急に立ち止まり、振り返って笑顔になる。

「やっぱり、柊くんが選んでくれればなんでも嬉しいよ。
 でも、それがいちばん困るのなら、今から何か食べに行こうよ。お腹空いてて」
「あぁ、俺のおごりでな。ホワイトデーじゃないけどそれでいい?」
「うん。だって忙しい柊くんとデートできるんだよ。すっごく嬉しい」

そんな簡単なことでいいのか、と思った。
けれど、俺も同じだと思う。
好きなものをもらうより、一緒に居られる時間があれば楽しいし嬉しい。

「何食べたい?」
「お腹いっぱいになるものがいいなぁ」
「家帰って、晩飯食わねえのかよ」
「今日はお出かけとかでみんないないから。帰っても1人で寂しいしね」
「なら、俺も晩飯にするか。帰っても1人だし」

微笑んで頷くの手を取る。
彼女は少し驚いた表情をしたけれど、そっと握れば握り返してくれた。





■高岩覚司くんの場合

高岩くんからホワイトデーにお菓子をもらった。
それからデートに誘われた。
「小田原城址公園に象見にいくとかー」って、どれだけセンスないの。呆れた。
「夢の国に行こう」とか、それくらいのこと言うかと思ったのに。

「そこは、お金のこと考えて! 部活やってる高校生がそんな大金持ってるわけないだろ。
 バッシュとか買ったら金なくなるんだよ」
「そうだよねー、いつも同じようなクッキーだもんね」
「バレてた?」
「そりゃ、毎年本命贈ってるもん。いいものもらえるんじゃないかって、期待してた」
「期待はずれで、ごめん」

想像以上に高岩くんは落ち込んでいるようだ。
暗い顔で俯いている。
いつも飄々として、明るい人だと思っていた。
高岩くんだって人間だ。
落ち込んだり、悲しくなることもあるのだ。

「そんなに落ち込まないでよ」
「落ち込むよ。さんにそんな風に思われてたんだなって」
「ごめん、そんなつもりはなくて」
「いいよ、謝らなくても。毎年本命チョコもらっていることにも気づいてないじゃん、俺って。
 もっとかっこいいとこ見せて、さんに惚れ惚れしてほしいんだけどな」

そんなことないよ。
だって、私は高岩くんのこと好きだから。

「もう、とんでもないくらい惚れてるんだけどね」
「え?」
「聞こえなかったの? 2回は言わないよ」
「お願い、もう1回。この通り」
「だめー」
さーん!!」

遠くに殺人光線スタンバイ中の成瀬くんの姿が見えた。
時間切れだ。
「ほら、成瀬くん待ってるよ」
高岩くんの背中を押して、部活へ送り出す。

「どこでもいいから、高校生の間に1回くらいはデート行こうね」
心の中で呟いたのに、高岩くんは「1回と言わず、2回、3回デート行こうな」と言ってくれた。





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時間切れで2人しか書けませんでした……
ホワイトデーのお返しの意味について調べたことがなかったので、
クッキーが「友達」とは知らずに書いてました。
来年書くなら、ちゃんと調べてお返し考えよう。いえ、マカロンに決定。笑


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