[ 或 る 方 法 ]










「サ、サキ・・・」
小声で呼んでもサキは振り向いてくれる。
去り行くサキを引きとめようと、シャツの裾を掴んでしまった。
驚いたサキの顔を見て、私は俯いて「ごめん」と言う。
「俺に帰って欲しくなかったら、そう言えばいいのに・・・」呆れたサキの声が聞こえた。

久しぶりに会えた。
けれど時間がなかった。
ほんの少しだけ話して、時間は過ぎてしまった。
もっと一緒にいたいのに、時間はないのだ。
手を繋ぐこともできず、キスすることもできず、ただ目を合わせて会話しただけ。
サキは帰ろうとする。
私はそれを引き止めた。

引きとめた分だけ、私の時間は多くなるけれど、サキの時間がなくなる。
もう一度「ごめん」と言って、私はサキのシャツの裾から手を離した。
泣きそうな顔で笑顔を作る。
二人の仕事の休みがうまく重なればいいのに。
そうすれば、もっともっと一緒にいられるのに。
けれど、サキ以外の人と付き合うなんて考えられない。





「休みが重なればいいのにな」

「うん」

「こうやって、と合間にちょっとだけ会うだけしかできないじゃん」

「うん、合間にでも会えるからいいんだけど」

「それじゃ不満だろ?」

「私は・・・大丈夫。頑張れる」

は頑張れても、俺が頑張れないよ」





意外な言葉に驚いた。
けれど、よく考えれば当たり前のことだ。
会えない恋人同士、忙しくてメールも電話もしない。
満足できるわけがない。
それでも相手のことを思って頑張ろうとしても、相手が頑張れないのでは意味がない。
ねぇ、私はどうしたらいいの?

帰ろうとしないサキ。
「今日はもう少しだけと居させてよ・・・」そんな声が聞こえた。
手を繋いだ。
それだけで救われる。
無理をしても、それはマイナスの効果を与えるだけ。

手を繋いで、一言も話さずに歩いた。
目的地があるわけではないのに、ただ歩く。
一緒にいるだけで意味のある時間。






「昔はと付き合えるだけで十分だったのにな。どんどん欲張りになる」

「それは誰だってそうだよ。私だって、欲張りたいけど迷惑にはなりたくないから」

「気を遣いすぎてもダメ。欲張りすぎてもダメ。難しいな」

「そだね・・・」





しんみりしてしまった。
一緒にいる時間は楽しいものにしたい。
けれど、真面目に考えるだけで精一杯。
何をすればいいのか、わからない。
ただ歩いて、時間は過ぎて、気づけば駅前をぐるりと一周していた。
サキは、電車に乗って帰るんだ。

「じゃあな」と別れの挨拶。
私は頷いて手を振った。
次に会えるときまでに考えておこう。
気を遣いすぎない方法。
欲張らない方法。
一緒にいる時間をプラスにする方法。









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えー、こんなんでイインデスカ???
ハッピーな話にしたかったのに、なりませんでした。
ゴメンナサイ。

I'll dream ... ?
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