[ M y S i s t e r ]










「はーやーくー、次はサキにーちゃんの番だよ」

「わかったから」





正月早々、から「ヘルプミー」とメールが届く。
わけもわからずの家に行くと、そこは惨状だった。
両親は仕事にでかけ、ここは子供たちの家。
そして、4人姉弟でひとりだけ年が離れているは、弟たちの世話に手を焼いていた。
エプロンをしたが出迎えてくれたけれど、疲れ果てた表情。
そして、トランプ遊びにつき合わされている俺がいる。
といえば、弟の世話を俺に押し付けてスーパーへ買い物に出かけた。
小学生と幼稚園の弟たちは、宿題も終わらせていたり、宿題がなかったりで、遊ぶことしか考えていないらしい。

慣れない遊びに苦戦しながらも、少しだけ楽しかった。
人に囲まれて、笑って、話して、遊んで、それだけで楽しくなれる。
人間の力ってすごいなと思う。

「お茶が飲みたい」とみんなが言い出し、キッチンの冷蔵庫を開ける。
お茶をグラスに注ぐけれど、子供たちは慣れない手つきだからお茶をこぼしてしまう。
台拭きでこぼれたお茶を拭き取り、お茶を飲んで遊びの続き。
「疲れた」とよくこぼすだけれど、疲れる理由も、疲れているのに笑顔な理由もよくわかった。

「ただいまー」との声が聞こえると、子供たちはトランプを床に放り出して玄関へと走っていく。
愛されているんだなと思う。姉として、家族として。
「おかえり」と言えば、は「ただいま」と荷物を下ろして言った。
子供たちはが下ろした荷物を抱えてキッチンへ走っていく。
そして、予想通り、転ぶ子もいて、廊下を冷凍食品や牛乳パックがヘッドスライディング。
もちろんセーフだ。アウトなら、牛乳が廊下を流れるはず。

冷蔵庫や棚に買い出したものをしまうだけでも、騒がしい。
愛する姉を手伝おうと、子供たちは皆、ビニル袋の中をあさる。
はしまう場所の指示を与えるだけ。
「疲れるけど楽しいでしょ?」と俺に尋ねるは、何に満足しているのかわからないけれど、満足した表情だった。
休む間もなくは昼食の準備。
「面倒だからたこ焼きね」とが言うと、子供たちは喜ぶのだ。
そして、我先にと手を挙げて、の指示を仰ぐ。
学校で見るのとも、俺と2人きりのときとも違うの一面が見れた。
5人で囲う食卓は、俺にはないものばかりあふれていた。

の代わりに食器を洗う。
子供たちは外へ遊びに行った。
が俺を呼び寄せたのは、子供たちの世話をさせるため。
その間に冬休みの宿題をするつもりだったらしい。
のバイトは今日だけ休みで、明日から5連勤。
できることはできるうちにやる、それがのモットー。

食器を洗い終えたら、の姿は見当たらなくなっていた。
さっきまでテーブルを拭いたり、新聞を読んだりしていたのに。
階段を上って2階のの部屋へ行く。
はベッドの上にうつ伏せで転がっていた。
声を掛ければ、眠そうな声が聞こえる。







「・・・う・・・ん」

「布団かぶらないと風邪引くぞ」






は布団をかぶろうとせず、逆に起き上がった。
眠そうな顔のまま、こちらを見ている。
ベッドの上、俺はの隣に腰掛ける。
とん、と肩にの頭が寄りかかる。
「宿題しようと思ったけど、せっかくだからこのままでいさせてよ」相変わらず眠そうなの声。

俺はすることがなく、の身体を預かったまま。
腕をの身体にまわせば、の身体はもっと俺に近づく。
2人きりの世界。6畳の部屋。
預かった身体は俺より小さくて弱いのに、ずいぶん働き者。
今度の給料日には、何か買ってやろう。
働き者のお姉さんに。









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子供と遊ぶサキたんが書きたかっただけです。
なんとなく、サキたんの彼女は大家族な気がする・・・。

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