[ そ の 手 、 ]
こたつとみかん。
わたしとひとなり。
こたつに入って二人で宿題をする。
部屋にはカリカリと文字を書く音が響く。
ふと視線を仁成の手に送った。
バスケットをやっているのに白くて細い、綺麗な手。
思わず触りたくなる。
熱い視線を仁成の手に送っていたようで、仁成は私に声をかける。
「?」
「あ、うん?」
「ぼーっとしてる」
「あ、うん。仁成の手、きれいだなーって思ったの」
爪の形も綺麗。
男の人にしてみれば珍しくあまりごつごつしてない指。
ささくれもなくて、つやつやしている。
私の手とは大違いだ。
ささくれでボロボロ、指先はばんそうこうだらけ。
指は長くないし、バイトでつけてしまったやけどの跡もなかなか消えない。
そしてカサカサ。
ケアはしっかりしているつもりなんだけどな。
そんなボロボロの手を、仁成は好きだと言ってくれる。
お世辞なんて嬉しくないよ。
けれど、仁成はまじめな顔で私の手に触れて言うんだ。
「バイト、一生懸命やってるから荒れたりするんだろ?
手抜きしてたらそんなことにはならないし、使うから荒れるんだ。
それはが頑張ってる証拠」
「そうかな?」
「だから、俺はの手が好きだって言っただろ?」
ボロボロでもスキって言われて悪い気はしない。
でも、やっぱり綺麗な手でいたいよ。
仁成の綺麗な手に、私のボロボロの手は重ねられない。
スキンケアを怠るな。
仁成に「綺麗な手だな」って言ってもらえるように。
今日は学校。今は放課後。
今週は掃除当番だから教室の掃除をする。
最初に黒板をきれいにする。
チョークの粉で手が汚れたから、私は一度手を洗いに行く。
「!」と声を掛けられ振り返れば仁成が立っていた。
ハンカチで手の水分をふき取る私に、差し出すそれは、
「ハンドクリーム?」
「昨日、買い物に行ったら見かけたから。新商品」
「もらっていいの?」
「にプレゼント」
さっそく私はクリームを手にとって塗りこむ。
ほんのりさわやかな香りがする。
仁成にお礼を言って教室に戻る。
友達とおしゃべりしながらほうきで床を掃く。
「なんか、いい匂いがするね、ちゃん」と言われた。
仁成のおかげだよ。
仁成からもらったハンドクリームで、手荒れを治そう。
仁成の綺麗な手に、私の綺麗になった手を重ねられるように。
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ハンドクリームっていい匂いしますよね。
私、指フェチなんで、たいていの人の手は必ずチェックします。笑