[ そ の 温 か い 背 中 ]





なんだかほっとする。
仁成の背中に頭を押し付けて、後からぎゅーっと抱きしめると。
ぬくもりがダイレクトに伝わってきて心地よい。
仁成は何も言わずに邪魔であろう私を放っておいてくれるのだけれど、私がうとうとしているとそれを察知して腕を振り解く。





「寝るな。俺はの抱き枕じゃねぇんだから」

「いーじゃん、別に。気持ちよく寝かせてくれー」

「家帰って布団にくるまって寝てろ」

「やだー、仁成の背中あったかいんだもん」

「体温あるからあったかいに決まってんだろ、このバカ」





相変わらず、仁成は自分の彼女に向かって「バカ」と言う。
けれど私はバカなので・・・仁成が嘘を言っているわけではないから、私は反論できない。
それでも私は再度仁成に抱きつこうとするのだ。
腕を振り解く、抱きつくという行為を何度か繰り返した後、仁成が諦めて私の好きにさせてくれた。
私は仁成の溜め息が聞こえるまでずっと抱きついていたのだ。

大抵、私が後ろから抱きつくと仁成は溜め息をつく。
あまり良い感じはしないから、溜め息を合図にして私は仁成から離れる。
頭をコツンと仁成の背中にぶつけたら、仁成がぼそっと言った。





「後ろからだと、俺、何にもすることねぇんだよ」

「え?」

「だーかーらーっ、は俺に抱きついてられるからいいだろうけど、俺はのこと抱きしめたりできねぇから嫌なんだっつの」





目を逸らせて少し恥ずかしがりながら言う仁成。
私は当たり前のことを仁成に指摘されるまで気付いてなかった。
惚けている間に仁成にぐいっと腕をつかまれバランスを崩した私が倒れこむのは仁成の胸の中。
仁成は満足したのかずっと私の髪をいじり回したり、腕に力を入れてずっと強く抱きしめたり色々している。
こっちも気持ちいいなぁと思い始めたのに、今度は仁成が私の両肩を掴んでぐるっと私を180度回転させた。
そして、最初の状態、つまり、仁成が私のことを抱き枕にしているのだ。






「まぁ、俺もこっちも好きなんだけどな」

「どうして?」

「独り占めしているみたいだからな」





確かに、することが無い。
目の前に広がるのは空気の海だけで、手を伸ばした所で何も掴めない。
手持ち無沙汰な私を見かねて、仁成は腕を離した。





「ま、好きなようにやればいいさ。のこと好きだからこんなことさせてるわけだし」





最後のセリフは赤面ものです、仁成さんっ。
真顔で「好き」だなんて言われたら卒倒してしまう。
顔を真っ赤にしている私を見て、仁成はこらえることもせず大笑いして身体をジタバタさせていた。









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数ヶ月前に書いていたもの。使い道がなくなったのでアップ。
名前変換が少なくて話が短いのは、拍手お礼夢にしようと思っていたから。
拍手設置は断念します。サイトすら更新できないのにさ。
後から抱きしめられたらきっと手持ち無沙汰になるだろうなと妄想してみる(笑


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