# プ レ ゼ ン ト #





3月になり少しずつであるが暖かくなってきた。
飼い犬の散歩をする為、は近所の川原を歩いていた。
時折、強風が吹きつけ、の髪を巻き上げていく。
空の色は赤く変わりつつあり、人通りもかなり少なくなってきた。
の友人が、同じように犬の散歩をしに来ていた。
から犬を預かり、広場で2匹の犬を遊ばせる。
その間、は、川原から土手へ上がる階段に腰掛け、足を前に伸ばしくつろいでいた。
学年末テストも終え、短縮授業の始まった国府津高校。
週に1,2回しか活動しない部活に入っているは暇を持て余しているのだ。
アルバイトもしているが、今日はたまたま休みなのだ。

そんなとは対照的に、仁成は短縮授業のおかげで、昼食後はすぐに部活がある。
同じ学校にいるから顔をあわせることはあるものの、なかなか休日に出かけたりするということがない。
それをは不満に思っているわけではなかったが、寂しいとは思っていた。
少しでいいから2人だけの世界が作れたらいいなと思っていた。
だが、忙しい仁成にその本音を伝えることはできなかった。
迷惑になるのではないからと考えているからだ。

隣に仁成がいればいいのに、そう思いながらは対岸を通っていく車や人を眺めていた。
制服を着たカップルが仲良く寄り添いながら歩いているのを見て、うらやましく感じていた。
滅多にと仁成は一緒に帰ることがない。
仁成の帰宅時間はかなり遅い。そして、朝も登校時間は早い。
付き合いだしてから半年以上経つが、この2人は登下校を共にしたことは2,3回しかない。





「元気ないね。大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。なんともないよ」





の友人のヒナタはの浮かない顔を見て気遣っていた。
ヒナタの兄が川原を通りがかったので、ヒナタの代わりに2匹の犬の面倒を見ていた。
ヒナタはの隣に腰掛ける。ヒナタは仁成と同じクラスで仁成とも仲が良い。





「柊くん、のこと心配してたよ。あんまりデートとか行けないし、学校に一緒に行ったり帰ったりすらできないし。
 口では大丈夫とか言ってるけど、絶対寂しいとか思ってるんだろうなって。
 でも、自分に余裕が無いから正直気遣うことが出来ないんだって。
 そう思ってるだけで十分気遣ってるとは思うけどね」

「寂しいけど、どうしようもないしね。仁成、忙しいから休みの日くらいは家でゆっくりしたいだろうし」

「口数も減るね。最近、あんた口開かないでしょ?他の子も心配してたよ」

「別に、話すこともないから」

さぁ・・・疲れてる?」

「多分。帰って寝ようかな」





は立ち上がり、パンパンと砂を払い階段を下りる。
名前を呼ぶと、の元に犬が戻ってくる。
は再び犬を連れて川原を歩き始めた。
ヒナタはそれを見送って兄と2人で家に帰る。

わんわん、と突然飼い犬が吠えた。
吠えた先を見ると、つい先ほどまでのと同じ体勢で仁成が川原と土手の間の階段に座っていた。
犬に吠えられたことで仁成はに気づく。





「あぁ、か」

「どしたの?クラブ終わったの?」

「うん、少し休憩。これからん家に行こうと思ってた」

「なんで?」





仁成はスポーツバックの中からごそごそと探し出す。
それは掌に載るくらいの小さな箱。きちんと包装されてリボンもつけてある。
仁成はの前にそれを差し出す。





「これ、バレンタインのお返し、渡そうと思って」

「え?あ、ありがとう」





は今日が3月14日でそれはホワイトデーだということを思い出した。
まさかバレンタインのお返しが仁成からもらえるとは思っていなかったので、はとても驚いてしまった。
包みを開く許可をもらい、は仁成の隣まで階段を下りて隣に座る。
リードは腕に繋いだまま。
中からは羽根をモチーフにしたネックレスが入っていて、は早速自分の首にかけていた。
胸元に輝くそれを見て、は満足していたし、仁成もが喜んでいることに満足していた。





「何あげたらいいかわかんねぇから困ったんだけど、食べて無くなるものより残るもののほうがいいかと思ってさ」

「確かに、これだとずっと残るもんね。ありがとう、本当に嬉しいよ」





の笑顔に、仁成は少し顔を赤く染める。
そして、仁成は隣にある自分より少し小さな手をとり、繋ぐのだ。
は仁成の顔をちらっと見て、視線を対岸へ移した。
久しぶりに2人きりでいられることが、にも仁成にも嬉しいことだった。





「こうやって、たまに会えるのなら、デート行かなくてもいいやって思えるよ」

「もっと欲張れよ。俺だって休みの日に家にこもってるばっかりじゃつまんねぇし。
 たまにはどっか出かけようって思うから、それならも一緒にってなるし。
 そんなに恋愛経験ないからどうしたらいいかわかんねぇんだけど、が寂しがってることくらいは分かるから」

「そんなに寂しがってはないよ。大丈夫だよ、仁成が頑張ってる姿見て、私もちゃんと頑張ろうって思うもん」





仁成は寄り添うように座るの無理した顔をすぐに見抜く。
身体をぐっとの正面まで持っていくように動かして、軽くでこピンをする。
痛みに顔をしかめるの口を自分の口で塞いでやる。
は一瞬目を大きく開いて驚きを表現したけれど、ゆっくり目を閉じてキスを受けていた。





「ごめんなさい」

「当たり前だ。無理するなって言ってるだろ?」

「もう少し、一緒にいたいです」

「俺だって、一緒にいたいんだよ。だから、休みになったら一緒に出掛けような」





頷いたは握った手に力を入れる。
仁成は笑っての頭を撫でた。
そして、立ち上がって、を引き上げる。
「帰ろう」と言い、仁成はの手を引いて歩き始めた。









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プレゼントと聞いて思いついたのが季節的にホワイトデーのプレゼント。
なんか、こうラブラブじゃないものばかり書いてて、どうだかなぁと思う。
もっと幸せ溢れてるものたくさん書きたいです。次は頑張ろう。
ホワイトデーにお返しもらったことないなぁ。
春休みだからあげたクラスメイトからお返しもらえるのは4月とか5月なんです。


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