[ 現 実 虚 無 ]





虚無感。
喪失感。





そういう感じ。今の私の心境って。

ニョロニョロになりたいよ。

知ってる?ニョロニョロって。
フィンランドのお話、カバみたいに見える妖精ムーミンが出てくるの。
そこに白いニョロニョロした生き物もいるんだよ。それがニョロニョロ。
名前がまんまだよね。





「で、ニョロニョロになりたいって?」

「うん」





仁成は眉間にしわを寄せていた。
「とても俺には理解できません」とお手上げ状態みたいだ。
今度は私の話を聞いていたヒナタちゃんがこう言うから、仁成はがっくり肩を落としてうなだれていた。

「じゃぁ、私はコダマになりたい。カタカタって首動かしてさぁ」

コダマは有名だよね。もののけ姫にでてくる白い子たち。
森の精だっけ?おしりがかわいいんだよ。

そしてそして、さらに周りにいた男の子たちが真剣に言うんだ。





「じゃぁ、俺たちは何になろっか?」

「そうだなぁ・・・・・・」





仁成は完全に呆れていた。
そりゃそうだ。真剣な顔であのキャラクターになりたいって論議しているのだから。

それだけ、今の私たちは疲れてからっぽだってこと。
何にもないんだ。例えバスケットを一生懸命やっていても、心の中はからっぽなんだ。
目標はある。インターハイ出場、そして勝ち抜いて優勝。
けれど、生きてること、バスケットをすること、勉強をすること、食べること、寝ること、
全部本当に意味があるのかなと思う時があるんだ。
人間活動に意味が見いだせなくて、死んでもいいかもしれないって思うんだ。
考えれば考えるほど答えなんて出てこない。
それで、私はニョロニョロになりたいという結論を出したんだ。
死ぬわけじゃないけれど、とりあえず人間活動を止めて客観的に自分を見れるんじゃないかって。
もちろん現実にありえない話だけれど、それは仁成には納得できないらしい。





がそんなになりたいのならニョロニョロにでも何にでもなってくれればいいけど」

「いいけど?」

「けど、ニョロニョロのままでいいから、俺の隣にはいてほしいなって話」





そうだよね。仁成の言うとおりだ。
私は仁成のこと大好きで付き合っているわけで、きっと仁成も私のこと大好きって思ってくれてるのに。
思ってくれてるのにその相手はニョロニョロになりたいって言ってるんだ。
人生の意味について考えていて、前にはでっかい壁が立ちふさがっていて。
仁成っていうパートナーがいることすら忘れてしまったんだ。





「ごめんね」

「何が?」

「仁成のこと忘れてた」

「忘れるほど疲れてるんだろ?俺じゃの力にはなれないかもしれないけど、傍にいることくらいはできるから。
 辛かったら寄りかかってくれればいいし、何でも聞いてやるからさ。俺のこと、忘れないでくれればいいよ」





そうだね、そうだね。
涙がぽろぽろこぼれた。
久しぶりに泣いた。疲れていて、ちゃんと泣くこともできなかったんだ。
もちろん、笑顔なんてできなくて、面白いことがあったら笑えるけどそれ以外じゃ笑えっこない。





「泣きたくなったら泣けばいいし、面白いことがあったら笑えばいいし。
 無理して身体張る必要なんてどこにもないから、が思ったようにやればいいだろ?
 誰もが泣けなかったり笑えなかったりしても、怒らないからさ。
 いつも不機嫌でも、俺は隣にがいればそれでいいと思うな。
 だから、俺の隣に、いて下さい。俺はいつでもの隣にいるから」





あぁ、なんて優しい人だろう。
照れ屋な仁成は最後の言葉を私から目をそらして言っていたけれど、愛情たくさん詰まってるのはわかった。
私をぎゅっと抱きしめてくれた仁成の腕はとても温かくて、しっかりしていて、いろんなものを抱えても崩れないように思えた。
私というお荷物をどこまでも抱えていってくれそうな、そんな感じ。

でも、私は仁成の荷物にはならないよ。一緒に歩いていくから。
死んだりしない。ニョロニョロにもならない。
仁成の隣で、泣いたり笑ったり、今を一生懸命生きるよ。
からっぽだから、仁成と一緒にお花でも育ててみるよ、私の心の中に。
きっと、虚無感なんてなくなるはずだよね。









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誰か、私の中の虚無感を取り去ってくれないかなぁ、切実に。
前半の会話は実話で、本当にニョロニョロになりたいっての。
この話は私の実際の状況を的確に表してます。
何か見落としてるもの発見できないかねぇ・・・。
私もお花でも育てようかな。


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