[ for you ]





毎日頑張れるのは覚司がいるおかげ。





お菓子大好きゆっこちゃんと一緒にシュークリームを作る。
お菓子なんてほとんど作ったことはない、料理もしない私にできるか不安だったけれど、りっぱなゆっこ先生がいるおかげでなんとか作ることが出来た。
お菓子はお金を払えば手に入る。
けれど、自分で作るのも楽しい。
何より、好きな人に自分が作ったお菓子を食べてもらいたい。
「おいしい」という言葉と笑顔がほしい。

好きな人がいるから頑張ることができて。
好きな人が頑張っているから頑張ることができて。
好きな人が笑ってくれるから頑張ることができて。
好きな人が幸せになれるよう頑張ることができて。
好きな人と一緒に幸せになれるよう頑張ることができて。

100円ショップで買ったラッピング用品できれいに包んだシュークリームを手に、私は覚司の家へと向かうんだ。
今日は、合唱コンクールの打ち上げだから夕方まで家にいるはず。
呼び鈴を鳴らせば、覚司が出てきた。
家族は全員外出中らしい。





が連絡なしで来るなんて珍しいな。どうした?」

「シュークリーム作ったの。食べてー」

「マジで??いただきます!!」





シュークリームを作ったと伝えたときの嬉しそうな覚司の顔。
それだけで心が満たされる。
見慣れた覚司の部屋も、妖精の国のように見える。
シュークリームは覚司の口の中へ消えていく。
私は、熱いミルクティーを飲みながら、覚司の様子を伺う。
「おいしい。ありがとな」と私の目を見て言う覚司。
私は嬉しくて笑顔しか出せない。

部活のエースの覚司と、普通で特技もない平凡な私。
時間をもてあましている私は、部活で忙しい人の気持ちなんてわからない。
だから、どうすればいいのかわからない。
迷惑にならないように、けれど好きだから一緒にいたいし幸せになりたい。
覚司のことを想って作ったものを贈る。
それで、覚司が私のことを少しでも近くに感じてくれたらいい。





「せっかく部活が午前中で終わりなのにさ、合唱コンクールの打ち上げとかないよなぁ」

「そんなことないよ。平日だったら部活終わったら夜でしょ?そのあと打ち上げはしんどいよ。
 バスケ部のことを気遣ってくれたんじゃない?」

「っつーか、今日はとでかけたかった」

「え、私と???」





ゆっくり頷く覚司。
考えてみれば、毎日同じクラスで会うくらいで、あとは時間が合わなくてデートなんて2ヶ月以上していない。
二人きりで会うのは、3ヶ月ぶりだろうか。

「シュークリームだけじゃ、物足りない」と言って、覚司は私の頬に手を添える。
視線が一瞬絡み合った?
キスはシュークリームと紅茶の味。
「はは、お菓子の匂いがする」と言って、覚司は私をぎゅっと抱きしめる。
どうやらお菓子の匂いが、私の髪、服、至る所にしみついているみたい。
覚司の体温を感じる。
覚司も、私の体温を感じているのだろうか。

「今日はこれでオシマイ」そう言って、私は覚司から離れた。
時計を見れば、もうすぐ4時半。
打ち上げ開始まであと30分。
待ち合わせ場所まで行かなければ。

「行こうか」と言って、私の手をとる覚司。
手を繋いで覚司の家を出た。
きっと、触れていたら大丈夫。
デートじゃないけれど、手を繋いで歩けたら大丈夫。
時々物足りなく感じることもあるだろうけど、そのときは時間があるときにうんと埋め合わせすればいい。





また今度、いっぱい話そう。いっぱいキスしよう。いっぱい抱きしめあおう。
いっぱい愛情こめて、お菓子も作るからさ。
また君の笑顔を見せてよ。









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お菓子大好きです。作って食べるのが好き。
何かの匂いをまとってるのっていいですよね。
バイトの油の匂いは嫌だけど;
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