[ 冷めた紅茶のぬくもり ]





たまには甘えたくなって、巧の背中にぴたっとくっつく。
男の人の広い背中。
人のぬくもりに心が満たされていく。
巧はずっと黙ってた。
私がしたいようにさせてくれる。
甘いささやきはなくても、巧の優しさは伝わってくるよ。

スッキリとした巧の部屋。
空気は冷たいかもしれないけれど、巧がいるだけで暖かく感じるのだよ。

巧は変わらず本を読み続けていて、私にはちっとも構ってくれない。
それでもいい。
私は巧が大好きだから、こうして一緒にいる。
見返りは少しくらいほしいけれど、好きな人と一緒にいられる幸せがあるのだから構ってくれなくてもいいよ。

眠気に襲われて、まぶたを閉じてしまった。
次に目が覚めたらベッドの上で布団をかぶっていた。
目の前には巧の綺麗な寝顔。
驚いて飛び起きた。





「ん、?」

「あ、巧、起こしちゃった?」

が気持ちよさそうに寝てたから、俺も眠くなって」





巧が、私をお姫様抱っこでベッドに動かすところを想像して、赤面した。
目を細めて巧が笑っている。
私は軽く俯いて顔を隠した。
けれど、巧の手が私の顎をくいっと持ち上げて上を向かせるんだ。
目と目が合う。
巧は軽く触れるだけのキスをして、ベッドから降りて部屋を出た。
私はベッドの上で呆然としていた。
巧から私に触れてくることは滅多にないから。
天変地異の前触れだろうか。

折りたたみのテーブルの上に置かれた紅茶。
冷めてしまって、湯気はまったくあがっていない。
一緒に並べてあるクッキーをつまんだ。
パサパサしたそれを冷めた紅茶で流し込む。
そうこうしているうちに、巧が戻ってきた。
温かい紅茶の入ったカップを二つ持っていた。
一つを受け取り、両手でカップに触れる。
あたたかい。
それでも私は冷めた紅茶を飲みほした。
もったいないから、冷めても飲まなくちゃ。





は冷めた紅茶とかコーヒーが好きだな」

「好きじゃないよ。もったいないから飲まないとね」

「こっちは冷めてもおいしく食べられるから、焼きたてを食べよう」





巧は紅茶と一緒に焼きたてのクッキーをもっていた。
巧のお母さんが焼いているんだ。
そういえば、部屋の外から甘い匂いがする。
二人でまったりした時間を過ごす。
たまにはこういうのも、いいかもしれない。









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短っ、そして意味不明な話で。

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