[ Merry Christmas 2014 ]





■レノの場合


イリーナがぎゃんぎゃん叫び、ツォンさんの額には青筋が浮かび、ルードは黙ったまま冷や汗流してるし、社長はヘリを出せとうるさいし。
俺も、帰りたい。早く帰りたいぞ、と。
クリスマスがなんだ。それがどうした。
そんなイベント、勝手にやってろ。

「レノ先輩はいいんですか? 彼女とラブラブしなくていいんですか? 恋人達のクリスマスですよ」
「うるせーぞ、イリーナ。俺達はタークスだ。プロはプロらしく仕事してろ」
「いやです。私、ケーキ食べたい」
「わかった、ケーキ買ってきてやるから、それ食ったら黙って任務につけ!」
「本当ですか? レノ先輩やっさしー」

ったく、どうなってんだ。うちの後輩は。
エレベータに乗り、エントランスの受付嬢の会釈した頭を流し見てビルの外へ出ると、雪が降ってきた。

「ホワイトクリスマスか。イリーナが喜びそうだな」
「イリーナって誰? レノさんの彼女?」
「うおっ、

真っ赤なコートに、トナカイの角が生えたフードをかぶった
近所のケーキ屋の看板娘。
たまにバーのカウンターで見かける、ただの酒好き。

「何してるんだ?」
「ケーキの宅配。神羅の人がいくつかケーキを注文してたから、さっき受付のお姉さんに渡した」
「それ、調査課の分、あったか?」
「なかったよ。レノさん、調査課?」
「ああ。後輩がぎゃんぎゃん叫んでさ、クリスマスだからクリスマスっぽいことしないと任務につかないってよ」
「それで?」
「ケーキを買いに行こうと思って、出てきたところだぞ、と」
「お買い上げありがとうございますー。予備も持ってきてるの。これでいい?」

箱の中にはブッシュドノエル。イリーナが喜びそうだ。

「ありがとう。いくら?」
「レノさんならお代はいただかないわ。いつもおごってもらってるもの。私からのクリスマスプレゼントにして」
「おい、そういうわけには、いかないぞ、と」
「じゃあ、デート1回」
「なんか、それ、どこかで聞いたことがあるセリフ・・・」
「ゴールドソーサーに行きたいんです。今度連れてってくださいね」
「おいおい、そういうとこは彼氏と行ってくれよ」
「いやです。私、レノさんと一緒に行きたいんです!」

軽く告白されてるなぁと思っていると、顔を真っ赤にしたはケーキの箱を俺に押し付けて走っていく。
やべえ、どうしよ。
俺も、クリスマスに任務とかやってらんなくなってきたぞ、と。





■ルーファウスの場合


「あの、ルーファウスさん、ちょっと・・・」
「構わん。ついてこい」

ルーファウスさんとの待ち合わせ場所は神羅ビル前。
私を見つけたルーファウスさんは、私の肩を抱き、エントランスをくぐって受付へ向かう。
受付嬢が目を丸くしている。当然だ、自社の社長が女を連れているのだから。

「ゲストパスをくれ」
「は、はい、畏まりました」

差し出されたゲストパスを受け取り、私たちはゲートをくぐる。
大企業は、カードをかざさないとゲートをくぐれないのか。
そんなことに感心している場合じゃない。
ルーファウスさんは何をするつもりなの?

ゲートをくぐると、またルーファウスさんは私の肩を抱く。
そして、エレベータの上階へ進むボタンを押す。
待っている間も、いろんな視線が突き刺さる。
興味本位のも、冷たいもの、何の気持ちもこもっていないもの。
クリスマスに晒し者にされる私の気持ち、わかってくれないのかしら。

、表情が硬い」
「せめて、手を離してもらえませんか」
「断ると言ったら?」
「そう言うと思いました。これから何をするんですか?」
「そうだな、クリスマスらしいことだ」

黙ってルーファウスさんに導かれるままに進む。
ビルの屋上は高層階ということもあって、風が強い。

「寒っ」
「なら、しばらく温め合おうか」
「帰っていいですか?」
「つれないな、は。これからが本番だというのに」
「本番って何ですか?」

ルーファウスさんが指差す方には、一機のヘリコプター。
少し前に、ヘリに乗ってみたいと言ったことがあったっけ。

「メリークリスマス、。今夜はのために、ヘリコプターで世界を巡ろう」
「覚えてくださってたんですね。嬉しい!」
「当然だ。騒音がクリスマスの夜にふさわしくないが、それもまた一興」
「それくらいのほうがいいです。ルーファウスさん言うこと、全部聞こえなくなりますからね」
「何か言ったか?」
「いいえ、なんでもありませんー」

メリークリスマス、ルーファウスさん。
今夜はあなたのために、ずっと笑顔でいるから。




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メリークリスマス。
レノはこの後、社長のヘリを操縦することになります。

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