[ あっさりころがりおちるりんご姫 ]





※元カレのレノがたくさん出てきて、社長はほとんど出てこない、ギャグです。





派遣社員で節約しながらなんとか生活する日々。
もう少しお給料が欲しい。好きなものを買って、好きなことをして、銀行の口座残高を気にしないで生活できるようになりたい。
定時にあがり、スーパーの特売品を求めて歩いていると、元カレに出くわした。
元カレといっても、嫌いになって別れたわけじゃないから、今でも友達の感覚で数か月に一度は呑みに行く仲だ。


「おう、。仕事帰りか、と」
「うん、スーパーの特売品を漁りに行くの。レノも仕事帰り?」
「いや、仕事中。そんなに生活苦しいのか?」
「正社員じゃないしね。残業しないからそれなりのお金しかないの」
「へぇ、そりゃちょうどいい。うちの秘書課が人を募集してんだ。筆記試験と実技なんだけど、どう?」
「実技?」
「あ、いや、面接」


慌てて言い直すところが怪しいけれど、気心の知れた人が紹介してくれる仕事ならまともな給料がもらえる気がする。
なんといっても、天下の神羅カンパニーなのだから。
「今より待遇がいいなら、受けてもいいかな」と呟けば、レノは携帯で誰かと話し出した。
そして、「わかったぞ、と」と言うと、私の腕を引く。


「今から来いって」
「え、試験も面接もあるんでしょ? 勉強してないし、メイクも直してないし」
「体一つあればどうにでもなるぞ、と」


レノに連れられて神羅カンパニーのビルを訪れる。
受付嬢からゲストパスを借り、レノの務める総務部調査課の事務所の空いた席に座らされた。
金髪の女性が、紙とペンを机の上に置き、「どうぞ、筆記試験です」と言う。
おそるおそる紙を見る。


貴女について以下の問いに答えよ。

Q1.氏名、フルネームで。

Q2.好きな食べ物、苦手な食べ物

Q3.好きな生き物、苦手な生き物

Q4.得意な料理、苦手な料理

Q5.特技、趣味、苦手なこと

Q6.恋人にしたい異性のタイプ

Q7.結婚願望の有無

Q8.子供は好きか、苦手か、欲しいか


金髪の女性を見ると、ニコニコ笑っている。
レノは上司と思われる人と何やら話し込んでいる。
スキンヘッドの男性が、扉の前に仁王立ちで逃げられそうにない。
一体、レノは何を企んでいるのだろう。彼もただの馬鹿ではない。何か裏がありそうだ。

よく考えずにすらすらと問いに回答して金髪の女性に渡す。
引き換えに、待遇が書かれた紙を渡された。
勤務時間は実働8時間。フレックス制度あり。つまり、遅刻しても早く出社しても良い。
休日は土日祝日。但し休日出勤有り(振休有り)
給与:手取り30万程度〜

手取り、30万程度?
何かの間違いだろうか。一体どんな激務なのだろうか。
小刻みに震える手を眺めていると、レノが陽気に声を掛けてきた。


、試験は合格だぞ、と。次、面接な」
「ねぇ、何の冗談なの。待遇がありえない! というか、あれは試験なの? ただの合コン前のアンケートじゃない」
「そりゃぁ、待遇についてはそれなりの働きを求められるからな、女性の秘書課社員は」
「一般ピープルの私に務まらないよ」
「大丈夫だぞ、と。俺が一通り仕込んだから問題ない」
「仕込むって何を?」
「そりゃ、面接受けりゃわかるぞ、と」


レノは私の手を引き、エレベーターに乗ってビルの高層階へ向かう。
私の借りたゲストカードでは降りることのできないフロアでレノは降りる。
人気のないフロア。警備員もいない。
ここで誰と面接をするのだろうか。

レノは部屋の隅の本棚をずらす。
本棚はカモフラージュ。ずらした壁に扉が現れ、レノはノックする。


「社長、連れてきたぞ、と」
「入れ」
「じゃ、がんばれよ、と」
「ちょっと、レノ、社長と面接?」
「あぁ、秘書課は社長直属、しかも女性社員は社長の花嫁候補だからな」


衝撃を受けながら恐る恐る扉を開くと、見事に引き締まった上半身を晒した社長がベッドに腰掛けていた。
整った顔立ち、低く体の奥底に響く声。
レノに背中を押され、足をもつれさせた私は社長の胸に飛び込んでしまった。


「も、申し訳ありません!! 今すぐ出て行きます、失礼しましたーっ!!」
「出ずとも良い。私が呼んだのだ」


社長は私の体を軽々と抱き上げ、ベッドの上に転がす。
私の腕は簡単に社長の手で縫い止められ、下半身もがっちり抑え込まれてしまう。
社長は耳元に顔を近づけ、フッと小さく息をかける。それだけで体が痺れてしまう。


「面接を受ける覚悟はできたか、?」
「あ、あの……」
「返事がないのは肯定と捉えるが?」
「その、花嫁候補とは……」
「その通りだ。そのための給与だ」
「社長の為に、自分を磨けと?」
「そうだ」


あっさり唇を奪われた私は、結局そのまま社長に身を委ねて、秘書課に採用となった。

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こういうの、大好き!(笑)

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