[ ねこ、わたしはねこ ]





私がスパイだってこと、知ってるくせに。
いつまで傍にいさせてくれるのだろう。
世界を牛耳る神羅カンパニーの副社長という肩書きを除けてしまえば、何の魅力もない人・・・だろうか。
魅力がなければ、こんなにも傍にいたいと思うことなんてないだろう。

私は、彼に恋焦がれているのだろうか。

社長から依頼を受けて、社長の息子のスパイ活動をしている私。
ルーファウスは気付いてる、私が父親の送り込んだスパイだということくらい。
きっと、私に価値を見出している。
父親を牽制するための。
所詮、私とルーファウスの関係なんてそんなもの。
色気の欠片なんてありはしない。

「ここも寒くなったな」ルーファウスが呟いた。
空は青い。雲の流れが早い。
風が乾燥していて冷たく感じるようになった。
海辺の工場地帯。
周りは神羅兵ばかり。
どこからか迷い込んだノラ猫が、神羅兵の足元にまとわりついていた。
それを蹴り飛ばそうとしていることを察した私は、神羅兵に殺気を飛ばした。

だめだ、猫には目がないのだよ、私。

一瞬、猫も殺気に身体を強張らせたけれど、神羅兵がオドオドしているうちにこちらへやってきた。
毛並みはノラ猫にしては美しい。柔らかい毛の感触。
手を出せば、それをなめてくる。
屈んでいた私は、上を見上げた。
ルーファウスが、柔らかく微笑んでいた。
それには驚いた。





「ル、ルーファウスさんが微笑んでる・・・レアショット、ゲット」

「何を言っているのだ、?」

「微笑まないでしょ、氷のような人だもの」

「そうだな、前世は召喚獣シヴァだったかもしれないな」





冗談だとしても、ルーファウスから「前世」という言葉を聞くとは思いもしなかった。
意外とロマンチストなのかもしれない、この人は。
私の前世は一体何だったのだろう。
・・・猫かな。
この子のように、ノラ猫で自由気ままに暮らしていて、時々神羅兵に蹴られそうになったり、助けてくれた人になついたり。
恋焦がれている人に抱き上げられたり。

ルーファウスは私の隣に屈み、猫を抱き上げた。
猫は大人しくしていて、人のぬくもりが心地よかったのか目を瞑って眠り始めた。
神羅カンパニーの副社長とノラ猫のツーショット、これこそレアショットだ。
今日は、何かとレアショットばかりだな。

束の間の休息。
社長からルーファウスへ電話が入ったらしい。
猫は私の足元で、名残惜しそうにルーファウスのことを見ていた。
きっと、猫にもルーファウスの魅力がわかるのだろう。

「ノラ猫だろうと、スパイだろうと科学者だろうと」
ぎょっとすることをルーファウスが言い出す。私に背を向けて、足を進めて私から遠ざかりながら。
今はルーファウスに対するスパイ、そして元神羅科学者の私。
すべて、筒抜けなんだ。ルーファウスはすべて知っている。

「愛しいものに変わりない」

開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
「その間抜け面はなんとかしたほうがよいかと、私のスパイ嬢」私のほうを一瞬振り返ってルーファウスが言った。









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ゲームでルーファウスと一緒にいるのは犬でしたっけ。
私は猫好きですので。猫を出演させて社長(当時副社長・笑)に抱っこさせました。
こういうまったりした雰囲気って意外と社長に合うなぁ。

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