[ 痛い所はキスで消毒 ]





「んあー、あたまいたいー」
「静かにしろ」
「ルーファウスには関係のないこと」


頭が痛い。頭痛薬は効かない。
ベッドの上で布団を頭の上までかぶる。
深呼吸をする。息が布団の中に篭もる。
頭が痛いと、どうしてこう辛いのだろう。
頭を抱える。頭を壁に打ちつけたくなる。


「やめろ、。脳に障害が起きる」
「だって痛いの。頭が割れそう」
「大人しく寝ていろ」


ルーファウスが珍しく声を荒げた。
ソファでくつろいでいたはずなのに、ベッドにとびのり、私に覆いかぶさる。
ただ、私たちの間には掛け布団があって、体が密着することは無かった。
ルーファウスは布団をはぎとり、私の顔を両手で挟む。
目をぎゅっと閉じれば、額にぬくもりを感じた。


「おでこに、キスしたの?」
「そうだ」
「どうして?」
「痛い所はキスで消毒」
「バイ菌のせいで私の頭は痛いの・・・?」
「そういうことにしておけばいい」


ウイルス性の風邪だろうか。
朦朧とする頭で、ルーファウスの手を払いのけ、再び布団を頭までかぶる。
やっぱり、風邪なのかな。外が見えるまで布団をずらした。
ルーファウスは変わらず私に跨ったまま真っ直ぐこちらを見ている。


「他に痛いところは?」
「ない。そんなものはない」
「正直に言いたまえ」
「ルーファウスの戯言に付き合って心が痛いわ、ボケ!」
「そうか、心が痛いのか」


そう言うと、ルーファウスはまた布団をはがして私の右手を手に取り、その甲に口付けた。
そこも消毒?
手が痛いなんて言っていないのに。


「心は、ここにある」
「え?」
「何が、辛い?」
「え?」


ルーファウスは私の右手を両手で挟んで包み込む。
人の手はこんなにも温かいのだなとしみじみ思う。
私は冷え性だ。指先が冷えて仕方がない。


「冷たいな。の手」
「冷え性なの」
「ちゃんと温かいもの食べて、湯船にしっかりつかって、寝ろ」
「はーい」


ルーファウスの手が私の頭を撫でる。
髪を梳く手つきが滑らかだ。
まあ慣れているからなのだろうが。
その手はまた私の顔へと戻っていき、頬に触れる。
私の額にルーファウスの額が触れる。
唇に当たる感触に気付き目をゆっくり閉じた。


「ゆっくり休め」
「うん」
「元気になったら、また遊んでやる」
「遊ばなくて、結構です」


頭が痛くても、毅然とした態度で臨まなければ、またルーファウスに遊ばれる。
ルーファウスは笑って私の頭をくしゃっと撫でて部屋を出て行った。
静かになった部屋で、私は目を閉じる。
少し、頭の痛みがひいた気がする。
ルーファウスのキスは優しかった。そのおかげかな。




From 恋したくなるお題(配布)
バカップルな二人のお題【03. 痛い所はキスで消毒】

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傷口を舐めるパターンは「熱い消毒液」にあるので、違う感じにしようとしたらこうなった。
頭痛が辛いのはわたくしなのでこんな話に。

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