[ 栄養補給の手段は… ]





疲れたときはコレ!
栄養ドリンク。
ドラッグストアで六本パックを買う。
恥ずかしいから、外では飲まない。家でくつろいでいるときに飲むに限る。


「今日も疲れた・・・ルーファウスに絡まれた日は疲れ方が半端じゃないわね。さっさと寝よ」
「なら、添い寝してやろう」
「ル、ル、ルーファウス!!! どうしてここに???」
「部屋の鍵、かかっていなかったぞ。無用心だな」


空になった栄養ドリンクの瓶をテーブルに置くと、その手を掴まれた。
空いた他方の手も、ルーファウスに繋ぎとめられる。


「何が、したいの?」
「何が? そうだな、愉快なことがしたいな」
「あんたにとって愉快でも、わたしにとっては不愉快かもしれないよ」
「そんなこと、私には関係ない」


両手を掴まれても足なら動かせる。
ルーファウスの足を蹴り飛ばそうとしたが、足の甲を踏みつけられて動けなくなる。
痛いんですけど! レディの足を踏みつけるとか何事!?
キッと鋭く睨みつけたのに、ルーファウスは涼しい顔をしているから腹が立つ。


「ねえ、何がしたいの。わたしが何をしたっていうの。どうしてこんなことするの」
「弱気なもたまにはいいな」
「ねえ、本当に、どうして、わたしなの。やめてよ。一般人には一般人の暮らしがあるの。邪魔しないでよ」


涙が頬を伝う。
この人の前では泣きたくなかった。
ただ、一度泣いたら止まらなくなる。
涙がとめどなくこぼれる。
ルーファウスの表情は見えない。
ルーファウスがそっと指で涙をすくったようだ。


「悪かった」
「謝る、の、が、遅い」
「泣かせるつもりはなかった」
「本当は、泣いた顔も見たかった、とか、思っている、くせに」


返事は無かった。
できなかったんだ。口が塞がっていて。
ルーファウスの柔らかい唇がわたしの唇に触れた。そっと、一瞬、触れて、離れた。
もう一度、触れて、離れる。
わたしは目を閉じた。

ルーファウスの胸を軽く押せば、きっと拒絶できる。
でも、そうしなかった。できなかった。
ルーファウスのキスが優しかったから、受け入れてしまった。


「今日は、おとなしいんだな」
「う、ん。もう、いいの」


額と額をくっつけて、目を閉じて、相手の熱を感じる。
わたしを繋ぎとめていた手は離れていき、わたしの体に回された。
顔をルーファウスの胸に押し付ける。
これっぽっちも好きじゃないはずなのに、どうしてわたしは彼を拒絶しないのだろう。
しがみつくように、腕をルーファウスの背に回す。
ルーファウスは私の背中を優しくさする。


を抱きしめていると、落ち着く」
「そ、う」
「疲れたときは、会いたくなる」
「疲れるんだ?」
「当然だ。私を誰だと思っている?」


椅子に座ってふんぞり返っている社長じゃないものね。
疲れたりもするんだよ。
少しくらいは、年に一度くらいは労わってやってもいいかな。

神羅カンパニーの社長の栄養補給の手段は、きっとわたしだ。





From 恋したくなるお題(配布)
バカップルな二人のお題【02. 栄養補給の手段は…】

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ノンカフェインで寝る前に飲める栄養ドリンクをよく買います・・・

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