[ も う 一 度 、 一 緒 に ]





「復興しているとはいえ、薄暗いよなー、エッジはよ、と」

「そうだな」


相棒のルードと共に巡回に来たエッジの街。
自分の髪の色がどれだけ明るさを街に与えていることか。
・・・なんて、軽い冗談めいたことを考えるけれど、自分が街に明るさを与えることなんてない。
せめてが傍にいてくれれば。
そう思うけれど、二年前にはぐれて以来、一度もその姿を目にしたことはない。


がいてくれれば、人生バラ色なんだけどな」

「社長も喜ぶ」

「そうだな。…っておい!俺の前でそれを言うなって」


わかってる。
は社長の恋人だから、俺のことを振り向いたりなんてしない。
それでも、俺は以外の誰かに心底惚れることはなくて、しか見えなかった。
もう一度、俺の前で笑ってくれよ。
最高の笑顔は社長にしか見せないとしても、少しでいいから笑ってくれよ。

薄暗い路地。
星痕をわずらった大人たちが倒れ、子どもたちはそれに怯える。
健常者は誰も近づかない。
軽く目をやっただけだった。
強烈に惹きつけるものがあって、凝視する。
間違いない。
あの髪の色、体格、横顔、に間違いない。
なんであんな路地にいるんだ。

スローモーションに見えた。
が突然地面に引きつけられた。
慌てて路地へ向かって走った。
後ろで相棒が俺を呼んでいた。
こんなに全力で走るのは、いつ以来だろう。

あぁ、そうか、も星痕なんだ。
口から吐き出されたものを見れば誰にだってわかる。
どうして、まだ対処法が見つかっていない病気にかかるんだ?
どうして、社長とだけがかかるんだ?

抱き上げたの身体は、以前に比べて軽くなっている。
当然だ、このご時勢、満足いくまで食べられるほうがおかしい。
の身体を強く抱きしめた。





ヒーリンに戻り、社長の許可を得て社長の部屋のベッドにを休ませる。
が見つかったというのに、社長の表情も声のトーンも変わらない。
少しは喜べばいいのに。
俺らには感情を見せられないんだろうな。
きっと、社長の喜怒哀楽を知っているのはくらい。

ベッドで横になっている
呼びかけても目は覚まさない。
俺は時間を見つけてはの元を訪れた。
なんとなく、これが目覚める前に訪れる最後の時間になると感じていた。
きっと、この後、任務につくことになる。
きっと、その間には目覚める。
妙な確信があった。


、よく生きて戻ってきたぞ、と。

二年ぶり?元気にしてたか?って、星痕なら元気じゃねぇな。

なぁ、俺の気持ちに気付いてた?気付いてるよな、は賢いから。

どうしようもないくらい惚れてるのに、俺の前では目覚められないってか?

なぁ、また笑ってくれよ。また、一緒に任務につこうぜ。


どれだけ話しかけても返事はない。
ルードの足音が部屋の外から聞こえる。
もう時間だ。
何を考えていたのかよくわからないけれど、気がつけばに口付けていた。
俺は王子様じゃないってか。
キスしたところで目覚めないか。
部屋の扉が開いて、ルードが無言で俺を見る。
俺は頷いて、部屋を出た。









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いつ書いてたんだろ…汗
あ、ACCと同時発売の小説を読んで書いたんだ!
社長の話が書きたくなって、レノたん片想いにしてみました。

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