[ ジャンクフードには気を付けろ ]





腹が減っては戦はできぬ。

空腹に耐えかねてファストフード店に滑り込んだものの、財布の中には250ギルしか入っていない。ポテトとドリンクのSサイズが注文できるくらいか。ハンバーガーも食べたいけれど、ポテトの方が高カロリーだからエネルギーにはなるだろう。友人は私のトレイを見て「ダイエットにしては高カロリーだね」と言うが、ダイエットではない、金欠だ。
友人のハンバーガーは、ハンバーグをダブルにしてチーズとエッグまで挟んでいる。うらやましい限りで一口ねだるが断られた。
授業や実技演習、課題のことを一通り話せばあとは恋バナ。友人の恋の悩みに耳を傾けていれば、友人の隣の空いた席に飛びこんでくる輩が約一名。自分のトレイにに載せていた食べかけのハンバーガー、こちらはチーズとエッグがダブルに挟まった物を私の口の押し込もうとする。窒息しそうになり食べずに口から離して相手の顔を見れば、私が片想いしているレノ先輩だった。しまった、食べれば間接キスできたのに、なんてもったいない。


「食わないのか、と」
「あ、いえ、食べたいですが、窒息しそうだったので」
「ほら、じゃあ食えよ。ポテトだけじゃの腹は持たないぞ、と」
「どうして知ってるんですか、私のお腹の事情を!」


ありがたくダブルチーズエッグバーガーを頬張ると、間接キスのことはすっかり忘れて美味しさに酔いしれた。その間にレノ先輩は友人におつかいを頼み、友人は店を出てしまう。突然のレノ先輩の来訪と二人きりの状況に適応できず、黙ってダブルチーズエッグバーガーを咀嚼した。
食べ終えて包み紙を折りたたむと、レノ先輩が額を指で小突く。


「痛いです、レノ先輩」
「そりゃそうだ」
「何しに来たんですか?」
「んー、金欠でかわいそうな後輩にハンバーガーをおごってやろうと思って」
「だったら食べかけじゃなくて私が好きな物買ってくださいよ」
「それは思いつかなかったぞ、と」


それはいちばん最初に思いつくやつー!!!
心のなかでツッコミを入れつつ、レノ先輩の御尊顔を至近距離で拝める私は世界中の誰よりも幸せ者だ。注文したポテトもドリンクもからっぽになったので友人の状況を確認しようと携帯電話を手にすると、レノ先輩は「その必要はないぞ」と言ってトレイを片付け始める。


「あいつは頭もいいし空気を読むのがうまいからな」
「どういうことですか?」
「鈍いにはわかんないぞ、と。間接キスするためにわざわざ食いかけのハンバーガー押し込んだんだからな」
「は? え? 今、なんて?」
「今度会うときは普通のキスな」


レノ先輩は私の頭をぽんと撫でて私の分のトレイまで片づけて持っていてしまった。レノ先輩の目的は私と間接キスすることだったの? 次は普通のキスってどういうこと? 先輩の背中を追ったけれど店の外には見当たらなくて、気持ちの整理ができずモヤモヤする。

先輩、私のこと好きなのかな。










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リクエストありがとうございます。 「金欠でポテトくらいしか買えないところに、食べかけのハンバーガーを口にねじこんでくるレノ先輩」の話でした。
ハンバーガーよりポテトの方が高カロリーという記事をみかけたので。
ポテトよりオニオンリングが好きです。

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