[ いちばんになりたい ]





「見て見て見て!!!レノレノレノ!!!」
騒々しい。
久しぶりにと二人そろって休暇がとれた。
仕事でくたくただった俺とは、そろってベッドにダイブしていたのだが、
朝、目覚めればは隣にいなかった。
そして、エアコン設定温度二十八度の部屋でごろごろしていた俺の耳に飛び込んできたものは、の金切り声。
目をこすって体をベッドから起こすと、満面の笑みを浮かべたが俺の体の上に飛び乗ってきた。
結局、俺は体をベッドに預けるはめになる。

本当に目の前に差し出され、何なのか認識することのできない物体。
の手首を掴み俺から遠ざけたら、やっとが喜ぶ理由がわかった。
好きなアーティストのコンサートチケットがとれたのだ。
嬉しくてしょうがないの表情ときたら、今にも溶けそうだ。
正直言って、嫉妬する。





「嬉しくてしょうがないって顔だぞ、と」
「当たり前だよー。レアチケットだもの。まさか一般発売で取れるとは思わなかった!!!」
「よかったなー」
「棒読みね。嫉妬しないの!もう、嬉しくて私は溶けそうなの。あーもー、ニヤニヤしちゃう」





俺は、のにやけた顔が見たくなくて、枕を顔に当てた。
ため息をひとつこぼした。
俺とそのアーティストとどっちが大事なんだ?

どこかで聞いたことのあるセリフだなと思えば、昔の恋人に言われたんだったな。
『わたしと仕事、どっちが大事なの?』
呆れて笑った。まさか、言う立場になるとは思わなかったから。

いつの間にか、は俺の隣に転がっていた。
チケットは、ベッドヘッドに置かれている。
は体を俺に寄せてきた。





「わかってるんだよ。わかってるの」
「何が?」
「好きなアーティストにキャッキャ言ってないで、レノのことしっかり愛してあげなくちゃって」
「はは、無理に愛されても嬉しくないぞ、と」
「とはいえ、私に愛されたいと思っているレノくんがここにいるんだぞ、と」





は俺の頬を指でつつく。
くすぐったくて笑った。
わかってるんだ、わかってる。
は恋人が俺だと認めてくれている。
けれど、それとは別に敬愛する人がいる。
嫉妬したところで勝ち目はないし、負ける気もしない。
直接に触れられるのは俺だけだ。
いや、心を奪われたらそこで試合終了?
考えがまとまらないな。

ぐうーと腹の虫が鳴いた。
はクスクスと小さく笑う。
は「どこかにごはん食べに行こうよ!もう十一時だしね」と言うと、俺の腕を引っ張って体を起こそうとする。
飯食ったら、あいつに負けないくらい、の心を掴みたいなぁ。









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いまいちおもしろくならなかったなぁ。
まさにヒロインは私
「俺と○○○とどっちが大事なの?」って訊かれたら
「○○○」って答えて呆れられたい。笑

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