好きで、好きで、好きで、こういうのを愛してるっていうんだろうなって思った。

に言ったら、笑われたけれど。





      [ LOVE PiNK ]





パステルピンクのワンピースを着たは、待ち合わせ場所のビルのエントランスに立っていた。
コンビニで買ったと思われる紙パックのカフェオレを飲んでいる。
いつもそうだ。
俺が待ち合わせの時刻に遅れると、は紙パックのカフェオレを飲んでいる。
一度たりとも、ペットボトルのミルクティーだったことはない。
は俺の姿を認識したらしく、眉間に皺を寄せている。





「遅いよ、レノ!じゅーぶんレノの家まで迎えに行けたんだけど?」

「悪かったぞ、と。寝坊したんだ」

「昨日遅くまで働いてたのは知ってるけど、デートに遅刻すんな、バカー!!!」





に一発殴られた。
女とはいえ、に殴られると痛い。タークスだから。
タークスだから休日は目立ちたくない、そんな理由でいつも地味な色の服を着ている
春らしい色の服を着ていることに、俺は驚いた。
正直言って、嬉しい。
にはパステルカラーがいちばん似合う。
ずっと、想像の中でしかパステルカラーを身にまとってくれなかったが、今日は本当にパステルピンクに染まっている。

カフェオレを飲み干して紙パックを握りつぶしたは、くずかごに投げ入れた。
そして、俺の手を握る。
いつものパターン。
けれど、隣にいるの色だけが違う。
不思議な気分だ。

繋いだ手からも、の笑顔からも、幸せだという気持ちが伝わってくる。
俺も、同じ。
と一緒にいられて幸せだ。
仕事中だって一緒にいるけれど、それとこれとは違う。
任務でペアを組んでいるわけじゃない。
今は、相手のこと想っているから一緒にいる。
好きじゃなければ、一緒になんていないさ。

「結婚すればいいのに」
そんなことを周りから何度も言われた。
デートするだけじゃ足りない。
職場は同じ、それでも足りない。
けれど、四六時中一緒にいたいわけじゃない。

「絆でも欲しいのか?」
ルードに言われた。
そうかもしれない。強い絆が欲しい。
単純に、恋人よりも強い絆のような気がする。夫婦というものは。
そうか?本当にそうか?

そんなことを考えていると、脇腹に強い一発が入る。
の肘鉄をまともにくらって倒れないわけがない・・・と、そこまで強い肘鉄を恋人にくらわせるようなじゃない。





「レノ、ぼーっとしてるよ。今日は気分じゃなかった?それなら・・・」

「それなら帰ろうって言うんだろ?それは嫌だぞ、と」

「じゃあなんでぼーっとしてるの?せっかくのデートなのに。
 ツォンさんに頼み込んで、休みが重なるようにしてもらったんだよ?」

「悪かった。・・・でも、のこと考えてたから、許してほしいぞ、と」





一瞬、目を丸くして驚く。その後、顔をくしゃくしゃにして笑う。
「許すぞ、と」と俺の真似をするがかわいらしい。
の持っているパステルピンクのオーラと、ワンピースのパステルピンクが眩しい。
それにしても、このワンピースは自分で買ったものか?
あんなに、地味な服を好んでいたなのに。
携帯電話をいじりだしたは、何かを探していたようで、お目当てのものを見つけると携帯電話のディスプレイを俺に見せてくれた。
イリーナとのツーショット。
はパステルピンクのワンピース、イリーナはパステルブルーのワンピースを身にまとっている。
型は同じで色違い。
イリーナとお揃いで買ったから、地味な色じゃないのか。





「バーゲンで半額だったの!私は地味な色がいいから嫌がったんだけど、イリーナの押しに負けちゃって」

「むしろ明るい色のほうがレノ様的にはいいんだけど」

「そう?じゃあ、これから買うときはそうしようかな」

「どうして?」

「レノ好みのほうがいいじゃない。だって私はレノが好きだもの、レノに好かれる努力はしなくちゃね」





あぁっ、もう愛しくて仕方がない。
どうすればいい、この想い。
とりあえず、抱きしめてキスしたいけれど、公衆の面前でそれをして張り倒されたことが以前にあるから、やめた。









**************************************************

大学時代は黒ばかり着ていたので、
社会人になった今は明るい色の服を買うようにしています。
けど、黒が好きなんだなぁ、私。
好かれる努力はしたい、けれど自分の信念は曲げられない。
↑特に意味はないです;

inserted by FC2 system