[ 真 っ 赤 な ク ロ ー バ ー ]





はぁ、とため息をついた。
先が思いやられるぞ、と。
掌にちょうど収まる、真っ赤なリボンで彩られた小箱。
空に向かって投げたら、宙を舞って俺の手元に戻ってくる。
買ったはいいが、どうやってこれを渡す?
何の理由をつけて渡す?
理由なんてそもそも必要なのか?
渡したいから、贈りたいから、似合うと思ったから、それだけ。

なんでこんなに好きなんだろうな。
とびきりの美人でもないし、まぁ美人の類に入るけれど。
男に尽くすわけでもないし、不器用でおっちょこちょい。仕事でミスしてよくツォンさんに怒られてる。
いい女には程遠い気がする。
けれど、あの笑った顔が好きなんだな。
誰にも媚びない、そんでもって、心に響くあの笑顔。
俺の心に入ってきて出て行ってはくれないぞ、と。





「レノ、それ何?」

「お、え、?これはー、まぁな」

「胡散臭いわね」





渡したい本人に見られてどうすんだよ、俺!
そんな心のツッコミを入れつつ、もう一度、空に向かって小箱を投げた。
小箱が落下してくるのを待っていると、俺より先に小箱へ手が伸びていった。
に小箱を奪われた。
焦ってを呼ぶけれど、はどんどん俺から離れていく。
とはいえ、俺とが徒競走をしたら、間違いなく俺が勝つ。
だから、いつの間にかに追いついて、スーツの襟を掴んでいた。
はふくれっ面を晒している。

「返せ」「嫌だ」の繰り返し。
いつまで続くのだろうと思いながらも、「返せ」と言うのを止められなかった。
わりと諦めるのが早いは、ため息をついて俺に小箱を返してくれた。
俺は返してもらえたことに安心していたから、の発言には無防備だった。
面食らって間抜け面を晒してしまった。





「いいなぁ、私もクリスマスプレゼント欲しいー」

「ん、な・・・・・・」

「な、何よ、その間抜け面。レノらしくないわよ」

「や、クリスマスプレゼントって、俺そんなこと言ったか?」

「クリスマスプレゼントじゃないの?いいなー、私にもなんかくれ!」





滅茶苦茶だな、の発言は。
どれだけ俺の心を掻き乱せば気が済むんだ?
もしかして、ってドS?
俺をいじめるのがそんなに楽しいか?

返答しかねていれば、「いいもん、いいもん」と拗ねてはどこかへ消えていった。
きっとタークスの居室に戻ったのだろう。
俺は、変わらず掌に収まったままの小箱を眺めている。
頭上を、白い雲が幾度となく通り過ぎただろう。
神羅ビルの屋上、俺だけの空間。

「なんかくれ!」と要求するということは、は俺から何かを欲しがっているということ。
それは、クリスマスに特別な誰かからプレゼントをもらいたいということだろうか。
単に、物が欲しいだけなのかもしれない。

「私もクリスマスプレゼント欲しいー」と言ったのは、にはプレゼントを贈る人がいないってこと。
例えば特別な誰か、恋人のようなポジションの人がいないってこと。
もしかして、脈アリなんじゃねーの?と思ったけれど、あまりポジティブな妄想をしていると後が怖いから、それは忘れることにした。

何やってんだよ、俺。
これが任務だったら失敗、失敗、大失敗。
ツォンさんに怒られて、ルードには呆れられて、イリーナには馬鹿にされて・・・。
だったら「くよくよするなー。次、頑張ればいいわよ」って言うんだろうな。
あぁ、そうだ。はカラッとしている。
だから、俺をフッてもいつも通り接してくれるだろう。
だったら、冒険してみるか。





タークスの居室に戻った。
はデスクの上に広げた資料とにらめっこしている。
俺はさりげなく、まるで床に落ちてしまった資料を拾い上げて元に戻したかのように、に小箱を渡した。
クエスチョンマークを大量に浮かべているを見て、俺は笑った。
は資料を放り出して、小箱を開け放つ。
中に入っているものは、真っ赤な四つ葉のクローバーのモチーフがついたネックレス。

渡したいから、贈りたいから、似合うと思ったから、それだけじゃない。
が、これを欲しがっていることも知っていたから。
赤は俺のカラーだから身に付けていて欲しかったから。

「ちゃんと、レノにクリスマスプレゼント贈るから待っててね」
そんなことを言うの笑顔こそが、俺にとってはクリスマスプレゼントだぞ、と。
そう思いながら俺は頷いた。









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しまった、中途半端な話を書いてしまった…。
プレゼントを買ったものの渡せなくて悩むレノさん。

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