[ ナミダのち、きっとハレ ]





、君にはすまないことをした。
 君がレノに好意を寄せていることは始めから知っていた。
 けれど、私は君以外の誰かと付き合うつもりはなかったし、付き合うことで現状を打破したかった」
「・・・はい」
「私と付き合うことで、の心と体を傷つけてしまった。本当にすまない。
 私たちの関係はここまでで終わりにしよう」
「ルーファウスさま・・・」
、君も今の状況を変えたければ行動を起こさなければならないよ。
 ほんの少しの勇気があれば、私たちは何でもできるのだから」


ルーファウスが話し終えたところで二人はルーファウスの自宅に到着した。
はルーファウスが扉を閉めて姿を消すまでお辞儀をしたままだった。
社長を自宅まで送るという仕事を終えたは、黙って車に乗り込みタークスの事務所に戻った。
誰もいない事務所で机に伏せては一人泣いた。
半年前にルーファウスから交際を求められ、レノに好意を寄せていたものの断れなかった。
ルーファウスの真剣な姿に心打たれたのだ。
結局の心がルーファウスに揺らぐことはなく、
ルーファウスはこのまま付き合い続けてもの気持ちをこちらに向けることは不可能と悟って別れを切り出した。


「けど、私は社長と付き合った半年間、とても幸せでしたよ」
の最後の言葉にルーファウスは笑顔で返事をした。
その笑顔が忘れられない。


「レノ様のお戻りだぞ、と・・・・・・?」
事務所にレノが戻ってきた。は泣いて赤く腫れた目を見られたくないので、寝たふりをすることにした。
「寝てるのか、と」
レノは寝たふりをしているの隣の席に腰掛けた。その手をの髪に伸ばし、指に絡める。
さらさらと指の間を流れる髪をもてあそぶ。
「さらさらだな。社長の言うとおりだぞ、と」
は「社長」という言葉に反応して体を動かしてしまった。
すぐにレノの手はの髪から離れる。


「起きたのか?」
「・・・・・・」
「狸寝入りか、と」
「・・・・・・」
「社長とデートじゃないのかよ、と」


は体を勢いよく起こした。
真っ赤になった目と涙で濡らした頬を見て、レノはぎょっとする。
「大丈夫か?・・・んなわけないよな、泣いてるのに」
そう呟くと、レノは席を離れ部屋から出ようとする。
一人になりたくない・・・そう思ったはレノの腕を掴んで引き止めた。
そして慌てて離し、顔を両手で覆った。
なんて恥ずかしいことをしているのだろうと。
レノは優しい手つきでの頭をなでた。
「気が済むまで泣いたらいい。話したかったら話せばいい。俺はずっとここにいるぞ、と」
「あ、り、がと」鳴咽を堪えながら感謝の気持ちを伝えたは涙を流し続けた。


「社長と、別れた。
 私には好きな人がいたけど、社長の真剣な姿見てたら付き合ってもいいかなって思って・・・」
「うん」
「でも社長は私に好きな人がいることを最初から知ってて、それでも大切にしてくれた。
 私の心が揺らがないのを悟って別れを切り出してきた。
 ・・・社長に迷惑掛けてばかりで、私はダメダメだね」
「そんなことない。社長はと付き合ってる間、本当に楽しそうだったぞ、と。
 のろけ話をどれだけ聞かされたことか」


呆れた顔で離すレノは少し楽しそうだった。レノが笑うとも少し笑った。
「社長はが泣いてることは望んでないだろ。今日は存分に泣いて、明日からちゃんと笑って仕事しような」
レノの言葉には大きく頷いた。


「ついに別れたか・・・やっと安心して眠れるぞ、と」
レノの発言にクエスチョンマークを頭に浮かべる
「例えば、だ。の好きな奴に恋人がいたら安心して眠れないだろ?それと同じだぞ、と」
爆弾発言をしてレノはの肩をポンと叩いて部屋から出ていった。



『ほんの少しの勇気があれば、私たちは何でもできるのだから』

ルーファウスの言葉がの頭の中をよぎる。
すぐに追いかければレノに追いつける。
はぎゅっと拳を作り、部屋を飛び出した。
開いた勢いで、扉がバタンと大きな音を立てて壁にぶつかった。
物音に気付き、レノは振り返る。


「レ、レノ!!!」
「そんな大声で呼ばなくても聞こえてるぞ、と」
「わ、わたし……私の好きな人は、レノ、あなたです」
「え……あ……お、れ?」

「最初から、自分の気持ちに正直でいたらよかったのに。
 ……私は社長だけじゃなくて、レノのことも傷つけていたのね。本当にバカだわ」


微笑んでレノはに歩み寄り、そっと抱きしめた。
「今までよく頑張ったな。お疲れ様」
レノがにそう囁くと、は心の防波堤が崩れたかのように再び泣き始めた。
今度は、大好きな人の胸の中で。









**************************************************

突発的でございますが、FF7よりレノ、はじめました。
手元にあるFF7関連はACしかないのですが;
ACのアホっぽいレノは不評みたいですが、私は好きですよ。


inserted by FC2 system