[ white birthday ]





隊長の誕生日当日だというのにすれ違ってばかり。
昼も過ぎたというのに、一度も会えていない。
顔を見て、お祝いの言葉を伝えたい。
急ぎ足で執務室へ戻ると、眉間に皺を寄せた隊長が書類に目を走らせていた。


「隊長、ようやく会えました」
「おう、か。そういや、今日はまだ会ってなかったな」
「お誕生日、おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう」
「今年もたくさんプレゼントをもらいましたか?」
「ん、まぁな」


私の前でその大量のプレゼントを見せないように気を遣ってくれているらしい。
机の足元には、きっと綺麗に包まれた包装紙や袋が転がっているだろう。


「今年は、何を贈ろうかと悩みまして」
「別にいらねえよ。からは、いろんなものもらいすぎてる」
「隊長が今欲しいものは、なんですか?」


一応思案してくれているらしい。
とりあえず、お茶かしら。
机の上の空になった湯呑みを掴み、給湯室へ行く。
お茶を淹れて執務室へ戻ると、隊長は窓を開いて大声で叫んでいた。


「松本ー!!」
「やだ、隊長。そんなに大きな声出さないでくださいよー。
 誕生日なんですから、と二人きりの時間をたくさーん過ごせた方がいいでしょ?
 あたしからの誕生日プレゼントでーす。それでは、お先に失礼しまーす」
「んなもん、どうでもいい!! 仕事しろー!!」


また副隊長が仕事をサボっている。
私の姿が目に入ったのか、手をひらひらと振って走り去っていく乱菊さん。
私も軽く手を振り、隊長の机の上に湯呑みを置いた。
盛大なため息をつき、隊長は席へ戻る。


「ったく、あのヤロー」
「こりませんね、乱菊さんは」
「ほんと、ちゃんと働く部下が欲しいな」
「でしたら、私が代わりに働きますから」


乱菊さんの机の上に山積みになった書類を見て、私はその机に向かう。
隊長は頭をガシガシ掻いている。
もどかしい気持ちになったときは、いつもこうだ。
それを微笑ましく思ってしまう。


「明日まで放っておけ。そしたら嫌でもやるだろ」
「いいんですよ。どうせ隊長も早くお帰りにはならにでしょう? だったら私も一緒に仕事しますよ」
「無理すんなよ」
「大丈夫ですよ。それに」


それに、隊長と一緒にいられるから嬉しい。
乱菊さんからのクリスマスプレゼントだと思っていいかしら。

何も話さず、静かな執務室で書類に目を通し筆を走らせる。
時々、隊長へ誕生日プレゼントを渡しに隊士たちがやってくるが、私がいるので女性隊士たちは遠慮がちに隊長へ渡している。
私も、ちゃんと用意しておくべきだった。
毎年時間をかけて選んでいたのに、今年はどれもピンとこなくて買えなかった。
気合が足りない。
隊長への愛が足りない?

筆を走らせる手を止めて窓の方を見ると、粉雪がちらついていた。
初雪だ。
今日はとても冷える。


「隊長、雪が降ってますよ」
「ほんとだ。そりゃ寒いわけだな」
「現世では、雪が降るとホワイトなんちゃらって言うんですよね」
「イベントごとの名前の前に付けるんだよな」
「ホワイトハッピーバースデー、とかですかね」
「ハッピーはいらねえだろ」
「うーん、ハッピーホワイトバースデー」
「そっちの方がマシだな」


誕生日おめでとうございます、隊長。
来年もこうして傍で一緒に祝えますように。




**************************************************

3日もすぎちゃったけど、ひっつん誕生日おめでとう!!
事務員さんの旦那さんと私の誕生日が同じことが発覚し、
誕生日プレゼントは「何円以内でほしいものある?」と聞いて、デパートとかでその場で買ってラッピングして渡す、
という話を聞いて盛り上がった昼休みの歯磨きタイム。

inserted by FC2 system