[ マイ・スイート・ベイビー ]





藍染の反乱から四日。
井上織姫が隊舎に遊びに来て、午後は慌しかった。
あれから三日。
またに会えていない。
床に臥せっているのだろうか。
心配して部屋を覗きに行ったが、もぬけの殻だった。
結局、雛森の見舞いには一緒に行けていない。
三番隊の吉良が松本に会いにきたから案内してやり、酒盛りが始まったので、総合詰所に一人で向かった。

すれ違ってるな。
以前は休暇以外、毎日必ず顔を合わせていたのに。
世間一般の恋人達と比べたら、十分な頻度で顔を合わせていたから、少し減っただけで不安になる。

雛森の様子を伺って隊舎に戻った。
廊下を歩いていると、顔を真っ青にしたが口元を押さえて全速力で通り過ぎた。


「おい、!」
「ごめんなさい、吐きそう」


近くの厠所へ駆け込んでしまい、俺には追いかけることができなかった。
通りかかった女性隊士に中の様子を伺わせる。


は?」
「嘔吐してらっしゃいます。お水をもらってきますね」
「頼む」
「後は私が見ておきますので、隊長は仕事に戻ってください」


女性隊士は炊事場へ向かうが、俺にはどうすることもできず、松本と吉良の様子を見に行くことにした。
かなり呑んでいたからな。
歩いていてふと気付いた。
最近、と仕事中以外に二人きりになった記憶がない。
最後に互いの部屋を訪れたのはいつだったか。
一ヶ月以上前だ。

のさっきの様子、もしかして妊娠したか? つわりか?
タイミングがよすぎる。
先日も床に臥せていたと言っていた。具合が悪かったのはこのせいか?

まだ、結婚してねえよ。
急いで入籍しないと、子供が庶子になってしまう。
名前を考えねえと。は何てつけたいんだろうな。そんな話、したことないのは当然のことだ。

そんなことを考えながら酒盛り宴会場へ行くと、ふんどし姿の吉良と檜左木、それに松本が倒れていた。
つぶれるまで呑むなよ。


「隊長! とすれ違いませんでした?」
「いや、あれだ・・・」
も随分呑んでたから、気分悪くなったって出ていったんですけど」
「そっちかよ・・・」


自分が妄想をしていたことに恥ずかしくなった。
つわりじゃなくて、呑みすぎだったか。
来た道を戻る。
厠所の前では床に座りこみ、先程の女性隊士が水を飲ませていた。


「うー、気持ち悪い」
「呑みすぎですよ、三席。明日に響きますよ」
「ったく、お前まであいつらに付き合うことねえんだから」
「隊長、すみません。病み上がりなのを忘れて、調子に乗ってしまいました」


面倒を見てくれた女性隊士に礼を言い、下がらせる。
を抱き寄せ、湯のみに入れた水を飲ませてやる。


「勘違いだったが、いつかそういう日がきてもいいよな」
「何がですか?」
「なんでもない」
「ふーん、変な隊長」
「なあ、今夜、部屋に行ってもいいか?」
「構いませんよ。でも、私、酒臭いかも」
「ふーん、じゃあ明日にするか」


確かに、酒をかぶったのではないかと思うくらい酒臭い。
俺の鼻が敏感なだけなのか。


「部屋に戻って寝とけ」
「戻りたいけど気持ち悪くて動きたくありません」
「しょうがねえな」


を抱きかかえて、廊下を歩く。
腕の中でが喚いているがおかまいなしだ。
別に俺達の関係は隠しているわけでもないし、十番隊の隊士は全員知っているから、見られても何の問題もない。

この手でお前と俺の子供を抱きかかえる日が、いつか、来ればいいな。

今は、そう思うよ。




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妄想する日番谷くんを書きたかっただけ。
最近はお腹いっぱいになるからお酒も控えめにしてます。
アニメの侵軍編の話のとき、日番谷くんが望実をお姫様抱っこしてて、うらやましかった。笑

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