※59巻529話のネタバレ





      [ ふるえる手と心 ]





副隊長に仕事を押し付けた隊長は行方不明。
隊長を探しに行った副隊長の仕事は、残った俺たちがやるはめに。
一人なら不満でも、二人なら・・・頑張ろうと思える。
相手がだから、尚更。

机の上に引き取った書類はすべて目を通し、追随する書類は書き終えた。
天井に向かって息を吐く。
そういえば、棚の中にまんじゅうが入ってたな。
思い出して、それを食べる。
おいしくいただいた頃、が椅子を後ろに倒すほど勢いをつけて立ち上がる。
ガタンと派手な音を立てて、椅子は倒れた。
慌てて椅子を起こしたは、筆を置いた俺にうらやましいとでも言いたげな視線を送る。


「さすがだね、第三席は。日番谷くん、仕事がはやーい」
も、十分早いだろ」
「日番谷くんには負けるけどね。はい、私の分もまとめて隊長に渡して。
 私は昨日の報告書がまだだから、これから仕上げないといけないけど、あの二人も戻ってきそうだからお茶淹れるね」


しぼんで消えそうな霊圧と苛立った霊圧がこちらに向かっている。
あんたたちがやるべき仕事は、もう終わったというのに。
が給湯室に向かってしばらくして、隊長と副隊長が揃って部屋に戻ってきた。
隊長の顔が腫れあがっているのは気のせいということにしよう。
終わった書類を隊長へ差し出せば、次期隊長だと褒められ、それを聞いた副隊長がふてくされる。


「俺一人の力じゃないっす」
「ということは、アレだな、さすが俺の女!」


何のための決め顔かよくわからないが、隊長が顔を向けた先には、お盆に湯のみを四つ載せたが立っていた。
全員の視線を浴びて、は首をかしげる。
その仕草がまたかわいらしい。


「おかえりなさい、隊長。お茶淹れましたよ」
「さすがだ! 仕事もできて気が利いて、淹れたお茶は最高に美味い。
 冬獅郎とが入れば十番隊も安泰だな、ハッハッハー」
「ちょっと! 現副隊長の私がいないじゃない」


どさくさに紛れて隊長がの肩を抱いたから、睨みつけてやった。
「てめーもやってみろ」と言わんばかりの上から目線で片方の眉をあげる隊長。
俺がのことを好きだと知っていてやっているから余計に腹が立つ。

できるわけないだろ。好きって言えるわけないだろ。
好きだから、見ていればすぐにわかる。
あいつは、俺に興味を持っていない。
隊長にも興味を持っていない。霊術院時代の同期の吉良、阿散井も同じく、他のどの男にも。

の持ったお盆の上の湯のみを一つ手に取った隊長は、戸棚に目を向ける。
あのまんじゅう、隊長のだよな。適当に話をすりかえよう。
今度、甘納豆でも入れておこう。

気になる鳴木市の報告の件。
伝えれば、隊長は飛び出していく。
追いかけようとする副隊長を止めた。

俺は弱い。もっと強くなりたい。
中途半端な力では何も守れない。

隊長が飲みかけて残していった湯のみを片付けるの手が震えていた。


「どうした?」
「ううん、なんでもない」
「そうか、ならいいけど」
「日番谷くんは細かいこと気にしすぎだよ」


それはお前だよ。
の心が震えているのがわかる。すべてのことを気にいていたら、心が持たないだろ。

隊長は数日後に戻ってきて、総隊長のお咎めもなし。
それで全部終わりだと思っていた。




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原作を読んでいたら、ヒロインを原作にねじこみたくなるんですよね・・・
それが私の夢小説への原点。
まんじゅうごちそうさまの日番谷くん、かわいかった〜

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