公園の隅。
大きな桜の木の下にしゃがみ、身を潜める。
逃げてしまった。
みんなと向き合うことから。
怖かった。
人間関係なんて、すぐに崩れる。そして、それがないと集団の中で生きてはいけない。
まだ学生だもの。
がさがさと茂みをかき分ける音が聞こえる。
耳を塞いで俯く。
それでも、名前を呼ぶ声はしっかり聞こえた。
「さん」
「鳳くん・・・」
「探したよ。急に出て行っちゃったから」
「ごめんなさい。私、怖くなって」
「何にも怖がることないよ。さ、一緒に戻ろう」
鳳くんは手を差し出してくれた。
でも、その手を取る勇気がない。
「仕方ないな。それなら無理にでも連れて行くよ」
「え、ええ、うわあ、やめてよやめて」
鳳くんは私の体を軽々と抱き上げてしまう。
いわゆる、お姫様抱っこ状態。
「鳳くん! やめて! 恥ずかしい! 一人で歩けるから」
「だって、手を差し出したのに掴んでくれなかったから、それなら抱き上げるしかないし、
せっかく探して見つけたのにまた逃げられたら嫌だからね」
「逃げません! だから下ろしてー」
「嫌だ」
鳳くんって、優しいけどちょっと腹黒いよね。
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