「こういうとき、頼れるのが跡部しかいなくて・・・」

大雨の中、傘も差さず、ずぶ濡れになったが俺の家を訪ねてきた。
とりあえず風呂に突っ込んどけと言ったものの、様子が気になる。
かといって、一緒に入るわけにもいかず、浴室のガラス越しに話しかけようとして、とどまった。
嗚咽が聞こえる。
俺の出る幕じゃねえな。


「跡部、いるんでしょ?」
「ああ、悪いな」
「どうせ跡部のことだから、覗く度胸はないでしょうし」
「てめえ誰に向かって言ってんだ、アーン?」
「あとべさま」


浴室に笑い声が響く。
泣いてんだか、笑ってんだか。
ガラス扉に背を向けた。


「ねえ、今日泊まってもいい?」
「いいわけねえだろ。家に帰れ」
「えー、やだ。家に帰りたくないから跡部を頼ってきたのに」
「帰れ! 心配してんだろ」
「心配させとけばいいよ、たまには」


の家族が哀れだと思う。
素直さが欠片も見られない。
どうせわがまま言って家族を困らせて飛び出してきたのだろう。


「家には連絡しといてやるよ。泊まってもいいけど、俺の部屋に来んなよ」
「やったー! ありがとう、跡部。大好きー。跡部も襲いに来たらダメだからね」
「誰が襲うか、お前みたいな奴」


結局、は俺の部屋に来て、泣いて喚いて、最終的に泣き疲れて俺に抱きついて眠ってたけどな。
いつでも俺を頼ってくれればいい。
欲を言えば、もう少しかわいげのあるところを見せてくれればな。
今夜は眠れそうにないな。
の抱き枕にされ、俺はの頭を撫でながら思った。





[ 頼る ]





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