「ごめんね。重いでしょ?」
「そんなことないから。運動部員をなめんなって」
熱が出て動くのがしんどいというをおぶって帰る。
さすがに、人をひとりおぶって、荷物も抱えたら辛いが、そうも言ってられない。
運悪く、車で出勤している教師もいないし、の親も出かけていて捕まらない。
だったら、俺が送っていくしかない。
背中から、の体温を感じる。
こんなに密着することなんて滅多にないから、柄にもなくドキドキする。
「覚司くん」
「ん?」
「いつも、ありがと」
「いつもって、そんなに俺、何にもしてないけど」
「ううん。いつも私のこと心配してくれて」
そりゃ心配になるに決まってる。
俺に向けられる好意的な視線の分だけ、には悪意のこもった視線が向けられる。
その逆もしかり。
こうやって送っているのは、俺たちが相思相愛だということを見せつけて、諦めさせたいだけ。
「気にするなって。俺はには笑っていてほしいから、早く帰って寝て元気になってくれればそれでいい」
「うん、早く元気になるね」
の髪が首筋に当たってくすぐったい。
「全身で、覚司くんのこと感じられて、すごく幸せ」
「聞いてるこっちが恥ずかしいな……」
「言ってて恥ずかしい、私も」
表情は見えないけれど、保健室のベッドで休んでいたときのように苦しさが無くなっているように感じて安心した。
[ 感じる ]
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