長崎と小田原。
とっても遠い距離。
叶わぬ恋だとわかっていても、やめられない。
だって、それだけで嫌いになれるわけがないもの。

もさ、立花のこと諦めて次行けば? 柊とかさー」
「そうなんだけどね、やめられないんだよねー。美加にはわからない?」
「わからないわけじゃないけどさ、菫の顔見るの辛くない?」
「辛くないよ。菫は友達だから」
「立花のことを話す菫の姿も?」
「立花くんの話が聞けるから嬉しい」
「ほんとバカだね、は」

切なくなるのは当然のこと。
でも、好きな人の今を知ることができる方が、恋する私にとっては大切なこと。

告白して、振られてスッキリした方がいいのかな。
でも、今は伝える手段がないから、このままでいい。





[ 恋う ]





国府津の海岸線までランニングで来ると、ぽつんと砂浜に座る女子生徒の姿が見えた。
あの髪型はだろう。
海の向こうを見るではなく、砂浜の先を見ている。
そっちに何かあるか? 俺には何も見えない。

?」
「あー、柊くんだ。ロードワークの途中?」
「ま、そんなところだ。で、あっちに何かあるのか?」
「長崎ってあっち?」

立花が行った長崎を見てたのか。
ほんと、好きだよな、あいつのこと。
あいつが誰を好きなのか知った上で好きでいるんだよな。
ほんと、健気だ。

俺も、人のこと言えたもんじゃないけど。

があいつのこと好きだと知ったうえで、諦めないでいるもんな。
でも、俺とは違う。
は相手に入る隙がないが、俺にはある。
立花のこと諦めさせたら、絶対振り向かせてやる。




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