「なかなかうまくいかねえな」
「エレベーターに乗るより、階段を上った方が楽しいこともあるでしょ。そういうもんだよ」
「なんか違うだろ、」
「そう?」
夢というほど大それたことじゃないけど、今の仁成にとって一番大切なこと。
立花くんとまたバスケットをやるということ。
私にとっても、仁成と立花くんがコートの上を走り回る姿を見ることは、今一番大切なこと。
だから、応援する。
応援することしかできないけれど。
「たまには、みんなで出かけてみるのもいいんじゃない?」
「結局、体育館に戻ってきて練習するのがオチだろ」
「そうかな?」
「そうだ。一年の時、同じことやってるからな」
「そうなんだ。でも、楽しかったでしょ?」
「ああ、そうだな。たまにはいいかもな」
「でしょ?」
息抜きにボウリングがしたいと言えば、仁成はあっさり人を集めてきた。
みんなに囲まれている仁成の後姿を見ていると、心が温かくなる。
昔と比べて、冷めた態度も減ってきた。
「あと少しだね、仁成」
「何が?」
「ううん、なんでもない」
口に出しては言わないけれど、きっと伝わっているはず。
もうすぐ叶うよ、私たちの夢。
「いつもありがとな、」
「えっ?」
「なんでもねえよ」
不意を突かれた。
何よ、その爽やかな顔。反則じゃない。
[ 叶える ]
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