社長室の窓から二人の姿が見えた。
とレノ。
少し話したかと思えば、はレノを放って先を歩いていく。
レノは動きを止めた。

空が暗くなってきた。
身体が自然と傘を二本取って神羅ビルの外へ向かっていた。
ぽつぽつと降り出した雨は大粒。
傘が無い身には少し痛く感じるだろう。

それほど背の高くないがゆっくり歩いていれば、追いつくのは当然のこと。
傘も差さずとぼとぼ歩く姿は、生気を感じない。

後ろから開いた傘を差し出すと、こちらを振り返るが、顔がびしょ濡れ。
雨のせいだけではないだろう。


「しゃ、ちょう……どうしてこちらに」
「濡れるのはよくない」
「大丈夫です。家に帰ったらすぐシャワーで温まりますから。傘、借りますね」


傘に手を近づけるの手を掴む。
手を強く引き、よろめく身体を抱き寄せる。
意外と傘を持ったままでも抱きしめることはできるようだ。


「一人のときに泣くな。辛いときは誰かに慰めてもらえ」
「そんな人、いません」
「私が嫌いか?」
「社長?」
「身体が冷えている。早く帰って温まってゆっくり眠れ」
「はい」


ぺこりとお辞儀をして、去りゆく
レノのことは見るな。
私のことだけ見ていればいい。





[ 近づく ]





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