雲が月を覆い隠す。
今夜は雨の予報だったか。
傘は忘れた。
そんなことはどうでもよかった。
レノに振られた。
違う。私が当たって砕けただけ。
溢れ出る気持ちを抑えられなかった。
好きって言いたかった。
私の気持ちを知ってほしかった。
もう、この気持ちは抑え込むしかないんだね。
こみあげてくる気持ちは抑えられなかった。
涙が溢れて止まらない。
手の甲で涙を拭う。
好きになったらだめだったのかな。
明日からちゃんと出社できるかな。
ぽたぽたと雨粒が頬を濡らす。
雨が全部洗い流してくれればいいのに。
[ 溢れ出す ]
の後姿が見えなくなってから再び歩き始めた。
酒が足りない。
缶ビールを買ってふらふらと歩いていると、白いスーツ姿が傘を二本持って通り過ぎていった。
そうか、雨か。
それにすら気づかなかった。
髪から水が滴る。
社長みたいに気が利かないから傘も持っていない。
は俺に振られたと思っているだろう。
今更、追いかけたって、俺には見向きもしないだろう。
どうしてなんだ? 他にも社長になびく女はたくさんいるだろ?
どうして社長なんだ? 今の俺には逆らえない。
まだ酒が足りない。
また缶ビールを買った。
プルタブを開ければ、中から勢いよくビールが溢れ出た。
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