背中には壁。
前にはレノの身体。
レノの手が私の両手首をつかみ、壁に打ち付ける。
レノが私に壁ドン、さらに、拘束ですか・・・世も末だな。
「あ、あのー、レノさん?」
「ん? 気持ち悪いから『さん』付けするな」
「お伺いを立てたいから『さん』付けしたの」
「に拒否権はないぞ、と」
下半身は身動きがとれる。
蹴りを入れようとしたら、足の甲を踏みつけられ、身体全体がレノと密着する。
これは、非常に恥ずかしい体勢だ。逃げたいのに、逃げられない。
「レノ! やだ! 本当にやめてよ、お願い」
「嫌だぞーっと」
「なんで、こんなことするの。やめてよ、好きな子にしてやんなよ」
「だから、にやってんだ」
「冗談よして」
聞く耳を持たないのね。
ため息をついたら、腕は解放されたけれど、代わりに頭を抱き込まれる。
レノの胸元に顔を押し付け、私は呼吸困難になる。抵抗なんて、何の意味も成さない。
耳にかかった髪がかきあげられ、触れるか触れないかギリギリのところでレノが囁く。
「好きだ」
すとんと身体の力が抜けて、レノに全体重を預けてしまう。
ずっとこのままでいられるように、レノの背中に腕を回した。
それが私の答えだ。
[ 受け入れる ]
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