多分、茶化される。
だから、好きって言えなくて、ただの同僚のまま。

言いたいの。伝えたいの。
伝わって拒絶されるのは怖いけれど、言ってすっきりしたい。
ただのわがまま。相手のこと、何も想っちゃいない。

お酒を飲む前に、素面の状態で言わなくちゃ。
そう思って、帰り際のレノを捕まえた。
手にはビールとチーズ。
家に帰るまで我慢できなかったんだね。

言ったら、すごく失礼だけどアホ面を晒された。


「え? 、何か言った?」
「レノのそんな顔、初めて見た」
「だから、何って言った?」
「好きって言った」
「このビールが? それともつまみのチーズ?」
「茶化されるのはわかってたけど、やっぱり辛い」


きっと私のこと少しでも好きだったらそんなこと言わないよね。


「ごめん、今のは忘れて」
「ああ、わかった。よく聞こえなかったからそれでいいんだよな」
「うん、それでいい」


涙は出なかった。
今は、レノがいるから出なくていい。
ごめんね、レノ。邪魔をして。





[ 茶化す ]





ごめんな、。返事すらできなくて。
本当は茶化したくなかった。
誠意をこめて返事をしたかった。

社長がお前のこと好きだから、好きになるなって命令されてんだ。

本当は、好きすぎてどうしたらいいかわからないくらい、惚れてる。
に。

去りゆくの背中を追いかけて、抱きしめたい。
ちゃんと「好きだ」と言いたい。

悔しくて、空になった缶を握りしめた。




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