気づいたときには全部遅いんだよ。
この手から零れ落ちたものは、きっと、拾えないくらい粉々に崩れてほんの少しの風で吹き飛ばされてしまう。
大事にされてると思ってた。
実際、覚司は私のことを大切にしてくれた。
いつも笑ってくれて、甘えたら優しくしてくれて。
でも、対等じゃなかったんね。
「覚司さーん、ご飯食べに行こ?」
「んー、気分じゃないから俺帰るな。ごめん」
「覚司?」
「、俺さ、ちょっと休みたい」
「何を?」
「との関係を」
「何言ってるの?」
「んー、まぁ、な」
歯切れが悪い覚司を初めて見た。
一人でご飯は寂しいから、それなら私も家に帰る。
そう言って覚司の手を掴んだのに、私の手を握り返す力がいつもより弱い。
そっと触れているだけのような、いや、私が掴んでいるだけで覚司は何もしていないような。
風邪でもひいて少し疲れているだけだよね。
家に帰ってお母さんに作ってもらったオムライスを食べていて気付く。
あれもこれもどれも。
別れようって言われるのも時間の問題かな。
だったら、私から別れようって言ってあげた方がいいのかな。
[ 悟る ]
BACK>