表情も、行動も、寂しさがにじみ出ていて、見ているこちらが辛くなる。
レノ、どうしたの?
いつものように笑ってよ。


「レノ」
「なんだ」
「大丈夫?」
「大丈夫だぞ、と」


大丈夫だったら、そんなこと言わないよ。
心はここにないんだね。
永遠の別れになるんじゃないかと思って、去りゆくレノの腕を掴む。


、そんな顔するな」
「無理」
「泣くな」
「無理だってば」
「俺だって、このままを置いて行きたくない」


大事な任務なんだね。
掴んだ腕を離した。
ふわっとメンズのフレグランスの香りが漂ってきて、身体をぎゅっと抱きしめられる。


「痛いよ、レノ」
「少し我慢しろ」
「う、うん」
「全部終わって帰ってきたら、笑って迎えてくれよ、と」


返事はしなかった。
代わりに、腕をレノの身体に回して、スーツを掴んだ。





[ 掴む ]





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